
黒田電気や富士フイルムHDで反対票が目立つ
3月期決算企業の株主総会が6月末で終わった。今年は例年になく議決権行使の行方に関心が集まった。というのも生命保険会社など機関投資家が「スチュワードシップ」活動を一段と強化し、株式を保有する企業の議決権行使について、保険契約者の利益を第一に考える姿勢を鮮明にしていたからだ。
7月に入って総会での議決結果が財務局に報告されているが、予想以上に会社側議案への反対票が目立った。黒田電気では旧村上ファンド系の投資会社「レノ」が提案した社外取締役選任議案が可決されたが、財務局に提出された書類によると、株主提案で候補者となった安延申氏に対する賛成票は58.64%に達した。会社側提案に対する賛成票は、細川浩一社長への賛成票が54.54%となるなど、6人中5人が安延氏への賛成票よりも少ない結果になった。
総会前に会計不正が発覚した富士フイルムホールディングスでは、古森重隆会長の選任議案への賛成が83.26%、助野健児社長への賛成票が80.51%と、他の取締役候補が軒並み90%以上の賛成票を得た中で、反対票の多さが際立った。
また、武田薬品工業では相談役や顧問を置く場合には株主総会で決議すべしとする株主提案が出され、会社側は反対するよう株主に求めた。結果は反対多数で否決となったが、議決の中身を見ると、賛成票が30.51%に及んだ。
これらは、会社側提案に無条件で賛成する、という機関投資家の行動に大きな変化が生じていることの表れだ。もちろん、2014年に導入されたスチュワードシップ・コードの影響が大きい。
スチュワードシップ・コードは「責任ある機関投資家の諸原則」と呼ばれ、機関投資家として取るべき行動指針を示している。もともとスチュワードシップ・コードは2010年に英国で導入されたが、日本ではアベノミクスの成長戦略の一環として金融庁主導で導入された。各機関投資家はこのコードの受け入れを表明したことで、これまでのような経営者への「白紙委任」ができなくなったわけだ。
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