日本語教育の不備や孤立といった問題

 だが、そうした「便法」の結果、存在しないはずの移民が地域社会で深刻な問題になっている。外国人労働者が多い名古屋や浜松、群馬県などでは、日本語教育の不備や、地域社会からの孤立といった問題が自治体に重くのしかかっている。

 一方で、少子高齢化の影響で、仕事の現場では人手不足が深刻化している。建設や造船といった重労働分野だけでなく、食品加工や外食、小売りなどの分野では状況は深刻で、外国人労働者の受け入れを大幅に増やしてほしいというニーズが高い。また、介護や家事支援といった分野でも外国人労働力への期待が高い。さらに地方の農業の現場でも外国人労働者を求める声が強まっている。もはや技能実習制度など「便法」の手直しでは限界に達しているのだ。

 そんな声もあって、自民党は今年3月、政調会長の下に「労働力確保に関する特命委員会」を設置した。稲田朋美政調会長は「外国人材の活用について、正面から取り組んで議論する」と委員会設置の目的について説明した。もともと稲田氏は右寄りの政治家として知られ、永田町・霞が関では「外国人嫌い」とみられてきた。その稲田氏が外国人労働についての委員会を設置した背景には、安倍首相の強いリーダーシップがあったとみられている。

「移民」とは違うと強調

 委員会では「国民的コンセンサスの得られていない移民受け入れと誤解されないよう慎重に配慮しつつ、外国人材活用の在り方について検討を行う」とし、安倍首相の「いわゆる移民政策は取らない」という方針と整合性を合わせていた。もっとも、委員長には党内で移民解禁派とみられてきた木村義雄参議院議員を据えたことから、メディアの間でも「実質的には移民政策の是非を含めた議論にまで踏み込む見通し」だという認識が広まった。

 この委員会が5月24日、「『共生の時代』に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」という提言をまとめた。

■「共生の時代」に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方
自民党のサイトからpdf形式でダウンロードできる。https://www.jimin.jp/news/policy/132325.html

 提言の柱はこれまで単純労働とされてきた分野への外国人労働者の受け入れ解禁だ。「専門的・技術的分野の労働者は引き続き積極的に受け入れるべき」としたうえで、さらに、何が「専門的・技術的分野」であるかについては、「社会の変化にも配慮しつつ柔軟に検討する」とし、これまでともすると単純労働に区分されていたものにまで、対象を広げることを示唆している。