オーストリア・ドイツ国境を越えてきた難民たちが、ドイツ警察に登録センターまで先導される様子。欧州が移民や難民問題に揺れる中、日本政府や自民党は移民を連想させやすい外国人受け入れ議論を、これまでほとんどしてこなかったが…(写真:ロイター/アフロ)

このままでは在留外国人が、なし崩し的に増加の恐れ

 政府は参議院議員選挙の終結を待って、外国人労働者の受け入れに関する本格的な議論を始めたい意向だ。少子高齢化によって人手不足が深刻化していることから、労働力としての外国人の受け入れを求める声が急拡大している。一方でこれまで外国人受け入れについて正面から議論をしてこなかったため、外国人を社会の一員として受け入れるための制度整備が手付かずになっている。このままではなし崩し的に国内で働く外国人が増え、かつて移民政策で失敗したドイツと同じ轍を踏みかねない。そんな危機感から政府が重い腰を上げることになった。

 「いわゆる移民政策はとりません」──安倍晋三首相は就任以来、繰り返しこう述べてきた。安倍首相を支持する右派の人たちを中心に外国人受け入れに対するアレルギーが強いこともあり、慎重な言い回しを続けてきたわけだ。

 だが一方で安倍首相は、人口減少に伴って職場での深刻な人手不足が起き始めていることや、コミュニティが維持できなくなりつつあることに、危機感を募らせてきたという。昨年あたりから内閣官房に非公式のチームを作り、外国人受け入れ政策について調査してきた。

昨年閣議決定の成長戦略の中に、外国人受け入れに向けた方針

 実は、昨年6月に閣議決定された成長戦略「日本再興戦略改訂 2015」の中に、外国人受け入れに向けた方針が書き込まれている。以下のようなくだりだ。

 「経済・社会基盤の持続可能性を確保していくため、真に必要な分野に着目しつつ、中長期的な外国人材受入れの在り方について、総合的かつ具体的な検討を進める。このため、移民政策と誤解されないような仕組みや国民的コンセンサス形成の在り方などを含めた必要な事項の調査・検討を政府横断的に進めていく」

 外国人の受け入れ政策についての調査・検討が盛り込まれたのである。ただし、選挙での争点になることを恐れた菅義偉官房長官の指示で、今年の参議院議員選挙までは政府内で表立って議論しないこととされてきた。その禁がいよいよ解かれるわけだ。

 これまで日本政府は「専門的・技術的分野の労働者」、いわゆる高度人材は受け入れていく方針を明確にしていたが、単純労働者の受け入れは原則として行わない姿勢を保ってきた。一方で、技術や知識の発展途上国への移転を行うという名目で「技能実習制度」を導入、研修生として単純労働者を事実上受け入れる「便法」をとってきた。また、日系ブラジル人やペルー人に限って労働者として入国を認めたり、家族の呼び寄せを許すなど、実質的な移民に門戸を開いていた。