「定員」を厳格化する文部科学省

 文部科学省は2015年秋、「定員」を厳格化する方針を打ち出した。収容定員8000人以上の大規模大学は入学定員充足率が1.2倍以上、それ以外の大学は1.3倍以上になった場合、私学助成金が一切もらえなくなる。2019年度以降は、入学定員充足率が0.95倍でも1.0倍の場合と私学助成が同額になるよう「インセンティブ」を設けることになっている。つまり、定員を大きく超えている大学には、「助成金を出さないぞ」と脅し、定員を抑えたところに助成金を上乗せするというわけだ。

 なぜ、文部科学省はそこまで口を出すのか。教育の質を守るというのが大義名分だが、要は大学を潰さないために定員を調整しているのだ。人気私立大学の定員が厳格化されたことで、人気の薄い大学にも学生が流れ、経営的に助かったと言っているわけだ。

 さらにオマケがある。そうした入学定員の管理や文部科学省との折衝は、“三流大学”の職員ではなかなか難しい。結局は文部科学省の薦めにしたがって天下りを受け入れているのだ。

 国からの助成金などもらわず、文部科学省の指導など無視をしたらどうか、と思うだろう。もともと政府からの教育の独立性は重要である。

 日本国憲法の89条は次のように定めている。

 「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」

 戦前の国家が教育に強く介入した反省もあり、国が「公の支配に属しない」教育に公金を支出することを憲法は禁じているのだが、いつの間にか解釈改憲で、大半の私立大学は助成金を国からもらっている。私立学校も国の支配に属しているというのが政府の解釈で、助成金は合憲だとされている。「学の独立」というのは建前で、大学は助成金によって国に首根っこを押さえられているのである。

 もはや、助成金なしに経営を行おうという気概を持つ大学はない。というのも金額が並大抵ではないからだ。2016年度の大学別私学助成のトップは「学の独立」を唱えてきたはずの早稲田大学で、総額90億5189万円。これに東海大学の88億8323万円、慶応義塾大学の87億3408万円と続く。大学には603校中570校に合計2968億円を助成している。

 不交付校が33あるが、未完成の大学や募集を停止しているところ、他の省庁の補助金をもらっているところがあり、申請をせずに受け取っていない大学はわずか17校だ。ほとんどの大学が当たり前のように国から助成金を受け取っている。「公の支配」に下るわけだから、監督官庁に頭が上がらないのは当然だ。

 大学に対して「強い権力」を持つ文部科学省が50年にわたって新設を認めなかった獣医学部が、それほどまでの「利権」だというのなら、そんな利権を一官庁に握らせておくことが正常なのか。助成金を使って大学に定員を守らせる「行政」が、本当に学問をしたい国民のためになっているのか、日本の将来の人材育成に役立っているのか。もう一度、私立大学のあり方について、抜本的に議論をするべきではないか。