「目玉不足」の規制改革実施計画
政府が6月に閣議決定した成長戦略「未来投資戦略2018」には、「国家戦略特区の推進」という項目が残っている。だが、143ページにわたる戦略本文の中で、わずか1ページと6行だけである。規制改革の「1丁目1番地」はまさに風前の灯火だ。
同じ6月15日には「経済財政運営と改革の基本方針2018~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~」、いわゆる「骨太方針」と、「規制改革実施計画」も閣議決定されている。この3つを同時に閣議決定し、それを行政の方針として7月以降の「事務年度」で実行に移していく、というのが第2次安倍内閣以降のやり方になっている。霞が関にとって「閣議決定」は重く、内閣の方針として決められた事として、行政はそれに何らかの「答え」を出す事が求められる。
霞が関の官僚は、閣議決定された方針に真正面から反対することは出来ない。面従腹背することも可能だが、成果を上げなければ、官僚としての評価が下がる。この3本の閣議決定は極めて大きな意味を持つのだ。
だが、今年は「規制改革実施計画」がニュースで大きく取り上げられることはなかった。「目玉」に乏しかったのである。
実施計画を策定したのは政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大学教授、元経済財政政策担当大臣)である。計画には、「改革の重点分野」として、「行政手続コストの削減」、「農林」、「水産」、「保育・雇用」、「医療・介護」、「投資等」及び「その他重要課題」を掲げている。農林ではかつてJA全中の解体などを掲げ、大きな議論になったが、ひと山越えた感じになっている。
今年の計画では、放送と通信の融合に向けた規制改革などが盛り込まれているが、今ひとつ話題にならなかった。
これまで、農業ではJA、医療では医師会、雇用問題では労働組合などを、岩盤規制を守る既得権者とみなし、政治が前面に出てそうした団体と戦う姿勢を安倍首相らは取り続けてきた。そうした改革姿勢が国民の支持を得て、高い支持率につながると考えたのだろう。
ところが、ここへきて内閣の足元が揺らぐとともに、そうした既得権者をやり玉に挙げて規制改革を進める手法はなりをひそめるようになった。安倍首相が「敵を作らない」方針に変えたのかどうかはわからない。だが、規制改革をめぐる永田町や霞が関のムードが大きく後退していることだけは間違いない。
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