アベノミクスに対する逆風が強まっている(写真:UPI/amanaimages)
アベノミクスに対する逆風が強まっている(写真:UPI/amanaimages)

加計学園問題で国家戦略特区に批判が集中

 内閣支持率は底割れを回避し、奇妙な「安倍一強状態」が続いている。森友学園問題や加計学園問題への対応には、多くの国民が不信感を抱いているものの、野党からも自民党内からも安倍晋三首相を脅かす勢力は出て来ない。

 だからといって、かつてのような求心力が働いているわけでもない。野党が反対した働き方改革関連法も何とか成立させたが、結局は数頼みだった。

 そんな中で、猛烈な逆風が吹き始めているのが「規制改革」である。第2次安倍内閣発足以降、安倍首相が推進してきたアベノミクスでは、「3本の矢」の「3本目」として「民間投資を喚起する成長戦略」を掲げた。そして、成長戦略の「1丁目1番地は規制改革」だと言い続けてきた。

 当初「3本目の矢」には、海外投資家などが大きく期待し、株価上昇の原動力になった。規制改革で日本経済の「稼ぐ力」が増せば、株価が上昇するという期待が盛り上がったのである。ところが、その規制改革が、ここへきて、逆風にさらされているのだ。

 最大の要因は、安倍首相が「規制改革の1丁目1番地」と位置付けてきた「国家戦略特区」のつまずきである。首相は「岩盤規制」に穴をあけるドリルの刃になると宣言、医療や農業、労働市場を名指しして改革をぶち上げた。全国一律に規制を緩和するのではなく、特区でまず規制をぶち破り、それを全国に広げていく。そんな作戦を立てたのだ。

 ところが加計学園問題で、この特区に批判が集中することとなった。特区には2014年3月に東京圏や関西圏、兵庫県養父市などが地域指定され、2016年1月に「広島県・今治市」が3次指定として追加された。そして、特区担当大臣と自治体の長、事業者の三者で更生する「区域会議」で、獣医学部の新設を盛り込んだ。

 獣医学部新設は50年以上にわたって認められてこなかった「岩盤規制」である。結局、事業者として手を挙げた加計学園が、特区として認定された今治市内で2018年4月に獣医学部を新設したが、その認可の過程で、加計学園理事長と長年の友人である安倍首相の指示あるいは、官僚たちによる忖度があったのではないか、という批判が野党を中心に噴出したのだ。つまり、「加計ありき」で安倍首相が特区制度を利用したのではないか、というわけだ。

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