これはあくまでも「現状放置」が前提の試算だ。むしろAIやロボットを積極的に活用することで、人々の「働き方」を変えて行けば、新しい仕事も生まれて来る。報告書では様々な「変革」を行うことで、失われる仕事を735万人から161万人に減らすことが可能だとしている。

 そのための「具体的戦略」として、「報告書」は以下の7点を掲げている。これまで言われてきた取り組みを網羅的に包含している部分が多いが、関心のある方は報告書をご覧いただきたい。

  (1)データ利活用促進に向けた環境整備

  (2)人材育成・獲得、雇用システムの柔軟性向上

  (3)イノベーション・技術開発の加速化( 「Society 5.0」 )

  (4)ファイナンス機能の強化

  (5)産業構造・就業構造転換の円滑化

  (6)第4次産業革命の中小企業、地域経済への波及

  (7)第4次産業革命に向けた経済社会システムの高度化

 つまり、人工知能やIoT、ロボットなどを積極的に活用して、上記の7分野で「変革」を行っていけば、574万人分の仕事を生み出すことが可能だとしているのである。

構造転換が求める雇用のシフト

■職業別の従業員数の変化(伸び率) ※2015年度と2030年度の比較
変革により新しい仕事が生まれ多くの雇用を創出する業種がある一方、製造業などでは失われる仕事が多い見通しだ。日本全体で大幅な産業構造や働き方の転換が必要になる (出典:経済産業省「『新産業構造ビジョン』~第4次産業革命をリードする日本の戦略~」の45ページから)

 過去の産業革命をみても、この点はうなずける。産業革命で「機械」が誕生した際、人間の仕事を奪うとして機械を破壊する運動が広がった。だが、その後の歴史が示しているのは、機械の誕生によって新しい仕事がどんどん生まれたという事実だ。第二次世界大戦後に進んだ「自動化」や「無人化」でも似たような反応があったが、結果的には様々な別の仕事が生まれてきた。報告書はそれを前提に、積極的に産業構造の転換や働き方の転換を行い、人工知能やロボットによって生産性を高め、一人ひとりの取り分(報酬)を増やしていくことが可能だとしているのだ。

 ここで注目すべき点がある。「変革」を進めることで従業者数が大きく増える部門がある一方で、逆に従業者数の減少幅が大きくなる部門を想定していることだ。端的なのが、「製造・調達」部門である。現状を放置すれば262万人の減少になると試算しているが、変革した場合には減少数は297万人へと拡大するとしているのである。

 つまり、人口知能やロボットによって、「製造・調達」部門の仕事をむしろ積極的に削減し、それを他の部門に振り替えていくべきだ、としているわけだ。

 放っておけば減るが、変革によって増やせる仕事として、「営業販売」などを挙げている。これまで通りの営業職はどんどん不要になるが、「高度なコンサルティング機能が競争力の源泉となる商品・サービス等の営業販売に係る仕事」は増加するとしている。現状放置では62万人が減少するが、変革すれば114万人の仕事が増える。

 また、サービス職でも「人が直接対応することが質・価値の向上につながる高付加価値なサービスに係る仕事」は増えるとしている。ここでも6万人の減少が179万人の増加に転換させられるとしている。

 つまり、「人しかできない事」「人がやって高い料金を得られる事」に思い切って人材をシフトしていこうということである。