労働基準監督業務の民間開放も提言

 労働基準監督業務の民間開放についても提言に盛り込まれた。政府の「働き方改革実現会議」は今年3月、残業時間に上限を定め、違反した企業には罰則を科すことを決めた。月間の残業時間の上限を原則「月45時間、年360時間」としたうえで、忙しい月でも100時間未満、月45時間を超える残業は年6カ月までとすることになったのだ。だが、問題は、それに企業を従わせることができるかどうか。つまり、違反企業を摘発する監督体制があるのか、と言う問題だ。

 もちろん、現在でも労働基準監督局が労働基準法違反などの企業の摘発に当たっている。ところが、労働基準監督官の慢性的な不足のために、実際にチェックされている「定期監督」の対象になった事業所は全体の3%に過ぎないという。しかも、調査に入ったその3%の事業所の7割が法令に違反していたことが分かっている。圧倒的な監督体制の不備が、問題企業を野放しにしているわけだ。これではルールをいくら厳しくしても実態は変わらない。

 そこで規制改革推進会議が打ち出したのが、監督業務での民間活用。入札で決めた民間事業者が、残業に関わる労使協定(36協定)を結んだ企業に対して自主点検票などを配布・回収し、指導が必要と思われる事業所について、同意を得られた場合に、労務関係書類等の確認や相談指導を実施する、としている。そのうえで、こうした民間委託業者の調査に応じなかった会社に対して、労働基準監督官が調査に乗り出すことを提言している。

 民間事業者を使うことによって、定期的に調査する対象事業所を大幅に増やすことができるうえ、より悪質と思われるところに監督官を張り付けるなど、より効率的に運用できる可能性がありそうだ。民間事業者は社会保険労務士などを想定している。

 また、今回の提言では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた規制見直しも重点項目だった。特に、急増している訪日外国人に対応するため、旅館やホテルの規制緩和を盛り込んだ。旅館業法施行令で旅館は5室以上、ホテルは10室以上とする客室数の下限規制が設けられているが、その撤廃が盛り込まれた。

 旅館業法には、和室は布団、洋室はベッドと定める寝具の規制や、「受付台は1.8メートル以上」などとする玄関帳場の数値規制なども定められており、これらの撤廃も促している。

 安倍晋三首相は以前から「アベノミクスの成長戦略の一丁目一番地は規制改革だ」と述べている。規制を改革することによって、新規参入や従来のやり方とは違った創意工夫を促すことで、経済の活性化、経済成長につなげていこうという発想だ。規制改革によって新規事業が生まれるなど効果が出るには時間がかかることもあり、足取りは鈍いようにみえるが、改革は小さな規制緩和・撤廃の積み重ねであるともいえる。