配当で満足する個人投資家は少数

 ここ10年来、日本企業も配当を大きく積み増し、配当利回りは平均でも2%弱になっている。企業によっては4%程度の配当利回りを維持しているところもある。利益の一定割合を配当に回すことを明示する企業も出てきた。

 銀行預金金利が0.1%未満とほぼ「ゼロ」になる中で、企業の配当を期待して株式投資をする投資家は着実に増えている。しかしながら、配当で満足する長期視点の個人投資家はまだまだ少ない。

 長期に株式を持つメリットは、企業が成長することによって株価が安定的に上昇していく、という点であることは間違いない。長期視点で企業の成長を「買う」投資家が増えてくれば、個人金融資産に占める株式の割合はもっと増えていくことだろう。

 アベノミクスが始まって以降、政府は取引所と一体になってコーポレートガバナンスの強化を進めているが、その背景には日本企業に「稼ぐ力」を取り戻させる、という狙いがある。高度経済成長が終わるとともに、日本企業の収益力は大きく低下してきた。これを立て直すために株主の力を使おうとしているのだ。

 企業の成長を求める投資家と経営者の「対話」を促進して、企業に成長を求めるプレッシャーをかけようとしているのである。世界的に見て低い日本企業の収益力が回復すれば、当然、株価は上昇していく。

 企業が収益力を高め利益が増えれば、当然、配当も増えるし、株価も上がる。投資家にメリットが大きいのは言うまでもない。一方で、税収も大きく増えることになるので、国にとっても大きなメリットだ。もちろん、収益力が高まれば働く従業員にボーナスや賃上げの形で恩恵が及ぶ。新しい雇用も生まれる。さらには下請けや取引先も潤うことになる。

 安倍首相は「経済の好循環」を繰り返し強調している。企業収益が増えた分、賃上げを経済界に求めるという点に焦点が当たるが、実際には企業経営が変わることで、従業員も取引先も、投資家も国も、すべてのステークホルダーが豊かになるというシナリオを描いている。

 株価の安定的な上昇は、個人の将来設計にも大きな影響を与える。年金財政に影響を与えるという話だけではない。今後、働き方が変わる中で、個人は自分の責任で老後の生活設計などを考える必要が出てくる。年金も公的年金だけでなく、個人年金をかけたり、資産形成のために株式を長期保有することが不可欠になる。長年言われ続けてきた「貯蓄から投資」が安定的な人生設計に不可欠だという認識が広がれば、さらに株式投資に資金が流れ込み、株価を押し上げ、個人の金融資産が増えていくという「資産の好循環」が生まれていくことになる。