養父市の改革の背景に「失うものはない」との覚悟

 1次指定された地域の中で、未活用メニューが「特になし」、つまりフルに活用して規制改革に取り組んでいると認定されたのが兵庫県養父市。特区の「優等生」とお墨付きを得たのだ。

 養父市は職員出身の改革派である広瀬栄市長が先頭に立って、様々な改革プログラムを実施している。国家戦略特区のメッカ的な存在になっている。

 もちろん、既存の規制を守りたい陣営からすれば許しがたい地域ということになる。全国で初めて農業委員会からの権限移譲を実行に移したが、その際には地域の農業委員会よりも、県や国の農業団体などが大挙して抗議に訪れた。

 現在も山間部などで自家用車を使った「ライドシェア」(相乗り)事業の解禁を準備しているが、タクシー業界やバス業界から猛烈な反発を浴びている。

 広瀬市長が腹を据えて改革に取り組んでいるのは「失敗しても失うものはない」という覚悟だ。背景には、急速に進む高齢化と人口減少の中で、「何もしなければ滅びる」という危機感がある。

 特区諮問会議の評価では、沖縄県に対して厳しい指摘を加えている。「未活用」な事項として「観光、農業関係事項など全般」とされたのだ。アジアからの旅行者が急増した「インバウンド効果」によって沖縄経済は急速に上向いているが、主眼であるはずの観光分野で特区としてやるべき事がある、というわけだ。

 「総じて評価できる」と名指しされた東京圏についても、未活用メニューが指摘されている。例えば、東京都の場合、「家事支援、民泊(大田区を除く)、住宅容積率の緩和等」の活用が促された。

 東京都は舛添要一知事が国家戦略特区に冷淡だとされ、政府が直接要請しても拒否する例が出ている。例えば、ホームヘルパーに外国人の就業を認める「家事支援」については、神奈川県が実施に踏み切り、解禁に向けた作業が始まっている。多摩川を渡っただけでサービスが認められないとなれば、事業者にとってだけでなく、消費者にとっても不便である。安倍首相が舛添知事に直談判したにもかかわらず、舛添氏は拒否したと言われる。

 東京都では大田区がいわゆる「民泊」を解禁したが、その他の地域には広がっていない。

 安倍内閣は国家戦略特区での規制緩和を「突破口」にそれを全国へと広げることを狙っている。逆に言えば、規制によって守られている既得権層や、規制が権力の源泉である霞が関は、特区が「アリの一穴」になることを恐れている。それだけに抵抗は強いのだ。安倍内閣の改革の成否を握る国家戦略特区を巡るバトルは水面下で激しさを増している。