
安倍晋三首相が規制改革の突破口と位置づけてきた「国家戦略特区」。医療、農業、雇用などの分野で、いわゆる「岩盤規制」の打破を目指し、この2年間を「集中取組期間」としてきた。アベノミクスの息切れが言われ、安倍内閣の改革姿勢に海外投資家などから疑問符が付けられる中で、特区が「最後の砦」の様相を呈し始めている。
特区諮問会議でこの2年間の「評価」が行われた
4月13日、国家戦略特区の司令塔である「特区諮問会議」が首相官邸で開かれた。2014年1月の第1回から数えて21回目の会議だ。メンバーは11人。議長は安倍首相自身が務めるほか、閣僚が5人、民間有識者5人で占める。閣僚は首相のほか、麻生太郎副総理、石破茂・地方創生担当相、河野太郎・規制改革担当相ら。民間有識者は竹中平蔵・東洋大学教授や、八田達夫・大阪大学招聘教授、坂根正弘・コマツ相談役らが名を連ねる。安倍内閣がたくさん作った会議体の中で、最も「改革色」の強いものだ。
その特区諮問会議でこの2年間の「評価」が行われた。会議の締めくくりで安倍首相自身が総括して、こう話した。
「国家戦略特区は、これまで10カ所指定され、 171の事業が大きな成果を上げています」「『時間をかけて満点を狙うのではなく、スピード第一に、まずは突破口を開いていく』というアプローチは、間違っていなかったと考えています」「国家戦略特区の役割は、今後も大きいと考えています」
要は、国家戦略特区が着実に成果を上げ、日本の岩盤規制に穴を開け始めている、としたわけだ。
国家戦略特区は2014年3月に、東京圏(東京都、神奈川県、千葉市、成田市)、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)、新潟市、兵庫県養父(やぶ)市、福岡市、沖縄県の6カ所が1次指定されたのに続き、15年春には「地方創生特区」との名称に変えて秋田県仙北市、仙台市、愛知県の3地域が2次指定された。さらに今年4月には「広島県・今治市」の1地域が加わった。指定された地域がないのは北海道だけで、それぞれの地方に「改革拠点」が出来上がったことになる。
指定されると、その地域内に限って従来の法律による規制の緩和が可能になる。地域の首長と事業者、特区担当相によって「区域会議」を設置、それぞれの地域がまとめた「区域計画」を諮問会議で承認することで、それぞれの地域が従来の規制に縛られない独自の事業を行うことができる。その間、規制の「権化」ともいえる中央官庁は決定権を握らない。各地域が「ミニ独立国家」のようになるわけだ。
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