日本企業の「稼ぐ力」を取り戻せるか

 さらに、コードの改訂版では政策保有株を持っている場合の議決権行使について「具体的な」基準を策定・開示することが求められ、「その基準に沿った対応」、つまり議決権行使をすべきだとされている。

 また、「補充原則」として以下の2つが加えられた。

 「上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどにより、売却等を妨げるべきではない」

 「上場会社は、政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではない」

 ここまで畳み掛けられては、それでも政策保有を続けますと経営者が言い続けるのは難しいだろう。

 ガバナンス・コードはすべてを遵守することを「義務」付けられているわけではない。「コンプライ・オア・エクスプレイン(遵守せよ、さもなくば説明せよ)」を前提としたルールで、原則を遵守しない場合にはその理由を明確に説明すれば良い。もっとも「CEOの選解任のルール」や「株式持ち合いの縮減」を拒絶する理屈を株主が納得するように説明するのは至難である。

 また、原則の一部を遵守しないと表明した場合、それを理由に生命保険会社や年金基金などが株式保有を取りやめるリスクも経営者は背負うことになる。

 こうしたガバナンス・コードの見直しは海外の機関投資家を中心に、非常に関心が高い。

 もともとガバナンス・コードは2014年に安倍晋三内閣が閣議決定した成長戦略の中で策定が求められたもので、日本企業に「稼ぐ力」を取り戻させるための方策の一環として導入が求められた。それまでガバナンスの強化は企業の不祥事を防ぐための「チェック」に力点が置かれる説明がされてきたが、安倍内閣は日本企業の低収益の原因に、経営陣へのガバナンスが弱いことがあると考えた。1つのベンチマークとしてROE(自己資本利益率)を国際水準並みに引き上げることを掲げており、仮にそれが実現すれば、日本企業の株価は大きく上昇することになる。

 今回のガバナンス・コードの改訂が、日本の経営者に対するガバナンスの深化につながると多くの年金基金などが判断すれば、日本の株価にとってはプラスに働くことになる。