「過熱気味でもいいのではないか」

 総務省が1742の市町村に聞いた調査で、「寄付者に特産品を送ることをどう考えているか」という問いに対して13%227の市町村が「積極的に実施すべき」と答え、55%に当たる965市町村は「特に問題はない」と回答していた。「問題はあるが、各地方団体の良識に任せるべき問題」とした市町村が395団体(23%)あったが、「問題があるので規制すべき」と回答したのは21団体、わずか1%だった。91%の市町村が現状の制度を支持あるいは問題なしとしているにもかかわらず、総務省は「規制」に動いたわけだ。

 そんな総務省の返礼品調達額への上限規制にさっそく反対の声が上がっている。山形県の吉村美栄子知事は4月11日の記者会見で、「(返礼品競争が)過熱気味でもいいのではないか」と述べたと報じられた。毎日新聞によると知事は、「予算の獲得だけでなく、地域のPRという点でも官民一体となって盛り上がっている」「地方が盛り上がり一生懸命に取り組んでいる点を懐深く見守ってほしい」と語ったという。

 河北新報の報道によると、山形県の場合、2015年度には、米沢市がノートパソコンや牛肉を返礼品として、全国11位に当たる19億5824万円のふるさと納税を集めた。調達額の比率は6割という。また、寒河江市への納税額は13億7178万円(調達率5割)、東根市は9億6901万円(調達率3割)で、いずれも人気の返礼品は牛肉やコメ、サクランボといった地元の特産品だ。

すべての人が「返礼品目当て」というわけではない

 ふるさと納税額の急増のきっかけがこうした魅力的な返礼品にあるのは間違いない。実際に、大都市圏に納められるべき地方税の一部が、地方に回っているのは確かだ。だが、それは総務省が言うように「大きな問題」なのか。

 「日本には寄付文化が根付かないと言われてきましたが、ふるさと納税をきっかけに、寄付しよう、応援しようという意識が高まっている」と、ファンドレイジング(寄付金集めや資金の調達)に詳しいファンドレックスのイノウエ ヨシオさんは言う。「無税にできる上限を超えて、ふるさと納税している人がかなりいる」というのだ。

 ふるさと納税の中には、1型糖尿病の研究への助成を指定できる佐賀県の例や、犬の殺処分ゼロに取り組むNPOに助成される広島・神石高原町の例など、目的に共感を持った人からの納税を集めているケースも出てきた。こうした寄付での返礼品調達率は当然ながら低い。つまり、ふるさと納税者のすべてが「返礼品目当て」というわけではないのだ。

ふるさと納税の使途を、原発建設差し止め訴訟費用に

 北海道函館市は今年度から「ふるさと納税」の使途の一つとして、市が起こしている大間原子力発電所(青森県大間町)の建設差し止め訴訟の裁判費用を追加した。4月3日に受け付けを始めたが、わずか4日で約50件、120万円の寄付があったという。多くの自治体で、ふるさと納税の使途を、いくつかの項目から選んで指定できる仕組みが導入されている。

 これまで地方自治体は「自治」と言いながら、地方交付税交付金制度によって財源を総務省に握られ、国や都道府県に言われるがままに事業を実施せざるを得なかった。この長年の慣行が「国頼み」を生み、地方自治体の「自立心」を削いできた。ふるさと納税制度はそうした地方のムードに小さな風穴をあけ、創意工夫が生まれるようになった。

 地方自治体によっては、地元から上がる地方税収よりも、ふるさと納税によって得られる金額の方が大きくなったところもある。ふるさと納税を使って保育園を無料化した北海道上士幌町のような自治体も出てきた。そうした「自立」の芽を摘もうとする霞が関のネガティブ・キャンペーンに惑わされてはいけない。