日本の金融機関は保有する資産のうち貸し出しに回しているのは4割に満たない。国債や株式などの保有と並んで大きいのが全体の2割以上に達する現預金である。この多くが日銀の当座預金に積まれているわけだ。

 現在導入されている0.1%のマイナス金利は、「もうこれ以上日銀に持ってくるな」ということなのである。今すでに日銀にある当座預金の扱いは変わらないわけだ。

日本の不動産は世界的に見ても割安感が強い

 もし、日銀が「本気」になって、現在、当座預金に積まれている資金の一部にまでマイナス金利を導入したり、あるいは金利をゼロに引き下げたりすれば、巨額の資金が動き出す可能性がある。そうなれば、間違いなく資金は不動産などの資産に向かう。

 企業の設備投資などに資金が回り、生産活動が拡大して、企業収益が上がり、給与の形で従業員に還元される──。それが景気好転のシナリオだ。こうしたサイクルがマイナス金利によって動き出すかどうかは微妙だが、不動産や株式といった資産価格の上昇をもたらす可能性は大きい。流入する資金が巨額になれば、不動産バブルが起きてもおかしくはない。もちろん住宅投資の波及効果は大きい。住宅が建てば、家具や家電製品、自動車などの耐久消費財の買い替え需要につながる。

 足元の景気を見ると、逆風が強まっている。個人消費の低迷が続いているのだ。14年4月の消費増税の影響が残っている。また、円安で輸入食材などを中心にジワジワと物価が上昇している一方で、賃金は思うほど増えていない。実質賃金は減少傾向にあるのだ。そんな中で、不動産需要に火が付くかどうかは、景気の先行きにとって極めて大きい。

 もちろん、日銀がマイナス金利政策を本気で推し進めることが重要になる。つまり、追加策を打ち出せるかどうかだ。マイナス金利によって本格的に不動産価格が上昇し始めれば、投資が投資を呼ぶ好循環に入る可能性もある。

 ただし、不動産価格が上昇しているスイスなどと大きく違うことがある。日本は人口が減少していることだ。スイスはドイツからの移住者が増えていることも、不動産価格の上昇の一因になっている。日本でも中国人などによる不動産購入が目立つが、それでも海外からの移住者は少ない。

 日本の不動産は世界的に見ても割安感が強い。本格的に不動産価格を上昇させるには、不動産を買うような富裕な外国人が日本に定住しやすいような制度整備を急ぐべきだろう。