景気好転へのサイクルが「マイナス金利」によって動き出すかどうかは微妙だが、不動産などの資産価格の上昇をもたらす可能性はある
景気好転へのサイクルが「マイナス金利」によって動き出すかどうかは微妙だが、不動産などの資産価格の上昇をもたらす可能性はある

 バブル崩壊以降、ほぼ一貫して続いてきた不動産価格の下落がようやく止まり、上昇に転じる気配が出てきた。

 国土交通省が発表した今年1月1日時点の公示地価によると、住宅地や商業地などを合わせた全用途の全国平均が前年比プラス0.1%と、2008年以来8年ぶりに上昇に転じた。

 主因は、ここ数年下げ止まりが鮮明になっていた商業地が0.9%の上昇に転じたこと。住宅地は8年連続の下落になったが、下落率は0.2%と前の年の0.4%に比べても縮小しており、下げ止まり感が一段と強まった。

 問題はこれで地価が本格的な上昇に転じるかどうか。公示地価はバブル崩壊以降下げ続けてきた。いったん2007年と08年はプラスに転じたが、08年秋のリーマンショックによって再びマイナスになっていた。今回プラスとなった流れがどこまで続くのか。再び腰折れしてしまうのか。景気の先行きを占うことにもつながるだけに、関心が集まっている。

 今回の地価上昇のけん引役は東京圏の商業地で、3年連続の上昇だった。3年続きの上昇と聞くと、すっかり値上がりが定着した感じがするが、決してそうではない。上昇率が07~08年の時に比べて小さく、勢いが乏しいのである。

 07年の上昇率は9.4%、08年は12.2%だった。ところが、14年は1.7%、15年は2.0%、そして今回発表した16年は2.7%といった具合だ。ジワジワと上昇率が拡大してはいるが、勢いは8年前と大きく違う。テレビのワイドショーなどでは銀座の一等地の地価が上昇したことを強調していたが、まだまだその勢いは弱いのである。

 不動産価格の行方を占うもうひとつの統計がある。新築の住宅や分譲用マンションが何戸着工されたかをまとめた「新設住宅着工戸数」の推移だ。

 昨年6月頃には着工戸数が急増し、これで長年続いた住宅着工の低迷に終止符が打たれるかに思われた。昨年6月は8万8118戸と、消費増税前の駆け込み着工が多かった2年前(13年6月)を上回ったのだ。ところがそれ以降、再び13年の月間数字を下回り続けてきた。昨年10月には消費増税の反動で落ち込んでいた14年10月の数字も下回り、住宅建設の冷え込みが鮮明になっていた。

 それが3月末に発表された2月の統計で、変化の兆しが出てきたのだ。

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