内閣人事局で起きた「大政奉還」

 それでも霞が関が「内閣人事局」のせいで政治家への忖度が働いていると言いたいのは、旧来の官僚主導に戻したいという思いなのだろう。

 では、安倍内閣は内閣人事局を使って、人事権をフルに行使しているのかと言うとそうでもない。一部の人事に政治の意向が反映されているのは間違いないが、それは事務次官が人事を握っていた当時とあまり変わりはない。

 初代の内閣人事局長だった加藤氏は財務官僚出身で、官僚の話をよく聞いてくれる霞が関でも評判が良い政治家だ。

 だが、その内閣人事局長人事でも、安倍内閣は後退している。3代目に就いたのは杉田和博副長官。警察庁出身の官僚トップの副長官である。いわば政治家から官僚へ「大政奉還」が済んでいるのだ。2017年8月のことだ。

 今やるべきことは、むしろ政治家が官僚機構の人事権を握るための改革を進めることだ。国益第一で政策を遂行するために、幹部官僚600人の適材適所を行う。今は難しい降格などの異動も可能にすべきだ。降格ができない現状では、ポストがあかないため、なかなか抜擢人事や民間からの登用ができない。

 天下りも厳しく規制すべきだ。日本取引所グループには金融庁長官や財務省幹部が天下っているが、東芝の上場廃止を巡って自主規制法人が「甘い」決定を下した背景には天下り官僚による「主導」があった。官邸や経済産業省など霞が関の意向が反映されたと疑われている。

 東芝の粉飾決算については証券取引等監視委員会が、東京地検に刑事事件として立件するよう求めたが、一向に実現しなかった。これも委員会が独立性の低い組織で、自ら告発できないためだ。米国の証券監視委員会のような強力な捜査権限、告発権限を持った独立性の高い組織にする必要がある。公正取引委員会と同じ、いわゆる「3条委員会」である。だが、そうした制度改革に徹底して抵抗するのは金融庁や財務省。自分たちの権限やポストが減ることに抵抗しているのである。

 不正は徹底的に追及され、処罰されるべきだ。官僚組織による「忖度」を行わせないためには、政治や社会によるチェック体制を整える必要がある。不正を働いても絶対に得をしない体制を作るべきだ。

 今回の決裁文書改ざんを許してはならない。財務省解体にまで踏み込むべきだ。その上で、政治家への「忖度」が働いたことに対する政治責任を取るべきだ。財務大臣が責任を取るのは当然である。