インフラ事業への投資では、すべて失う可能性も

 だが、この報道は、GPIFが海外インフラ投資にのめり込んでいこうとしていることに国民の関心を呼び起こすきっかけになった。

 GPIFはインフラ投資について、「海外の年金基金等では有力な運用手法となっており、長期にわたり安定した利用料収入が得られるとともに、株式市場等の価格変動の影響を受けにくいことから、債券や株式との分散投資により、年金財政の安定に寄与する効果が期待できます」としている。確かに、海外の年金基金がインフラ投資をポートフォリオに組み込んでいるのは事実だ。

 だが、ここに大きな問題がある。海外の基金の多くは、毎年料金収入などが見込めるインフラに、直接投資しているケースが多い。つまり、料金収入から毎年一定のリターンを確保するようにするなど、リスク回避に慎重になっている。GPIFが協定を結んだカナダの年金基金も、GPIFの発表資料の図によれば、直接インフラ企業の株式などに投資している。

 ところが、GPIFは投資信託の形で投資するとしている。間に資産運用会社が入り、「金融投資」に変わっているのだ。インフラ事業自体のリスクの把握が、運用会社任せになりかねない。GPIF自身が直接インフラ投資のリスクを把握できなければ、安全な投資先とは言えない。

 上場企業の株式への投資と違い、インフラ事業自体への投資は、問題が起きた時に逃げるのが難しい。株式ならば市場で売却すれば済むが、事業投資では流動性が極端に薄く、転売が難しい。事業が行き詰まれば、投資をすべて失う可能性もある。

経営危機に直面している東芝の例

 いま、経営危機に直面している東芝が良い例だ。米原子力大手のウェスチングハウスを買収しただけでなく、米国の原発建設に深くコミットしたために、屋台骨を揺るがされている。安定的なインフラ事業と思われていた原発が、本体を危機に陥れることになったのだ。

 そもそも、GPIFに海外のインフラ投資のリスクを判断できる能力が備わっているのだろうか。株式投資のウエートを引き上げた際ですら、運用能力やリスク管理能力に疑問符が付けられた。インフラ投資は、より「事業」を見る専門能力が求められる。株式や債券以外のいわゆる「オルタナティブ投資」に資金を割いていくだけの力をGPIFが持っているようには見えない。

 野党やメディアは、こうしたGPIFの投資姿勢や、運用体制、リスク管理体制について、もっと突っ込んだ検証をすべきだろう。四半期決算ごとに損失が出たら大騒ぎ、利益が出れば安心、というのでは、本質は見抜けない。

 GPIFが3月3日に公表した第三四半期(10~12月)の運用成績は10兆4973億円のプラスになった。運用資産額は144兆8038億円に達する。国債などの「国内債券」の運用割合は33.3%にまで低下、国内株式が23.8%、外国株式が23.2%にまで高まった。安倍内閣になって実行に移したGPIF改革のひとつの柱だった「ポートフォリオ(運用資産割合)の見直し」で想定した形に近づいている。

GPIF改革のもう1つの柱、ガバナンス改革

 GPIF改革にはもう1つの「柱」があった。ガバナンス改革である。ポートフォリオ改革とガバナンス改革を、塩崎厚労相は「車の両輪」と言い続けていた。運用方針の合議制などを盛り込んだGPIFの組織体制の見直しについては法律が昨年通っており、今年秋には新組織体制に移行される。運用についてより透明性を高めていくことになると見られる。

 そうした中で、「海外インフラ投資」をどう位置付け、そのリスク管理をどうやっていくのか。また、投資内容や成績の開示をどうするのか、議論すべきことは多い。GPIFが運用するのは国民の虎の子である。あくまで年金を受け取る年金資産の保有者、つまり国民の利益を最大化することが最優先されなければならない。政府の意向や、金融機関、運用業者、アドバイザーなどの食い物にされることがあってはならない。