安倍首相も寝耳に水?

 さっそく、この問題は国会でも取り上げられた。翌2月3日の衆議院予算委員会で民進党の大串博志・政調会長がこう質した。

 「公的年金というのは、国民の皆さんのお金ですよ。将来の年金の給付に充てられるべきお金ですよ。これをトランプ新大統領の面会のときに、日本からお土産のように、安倍総理の財布がわりかのごとく出していくというのは、私、どういったことなのか」

 これに対して安倍晋三首相は気色ばんでこう答えた。

 「GPIFによる年金積立金の運用は、法律の規定に基づき、専ら被保険者の利益のために行われるものであり、実際にGPIFでそのように判断して運用を行うものと考えているわけでありますが、政府として今おっしゃったようなことを検討しているわけでは全くございません。これははっきりと申し上げておきたいと思います」

 国民の年金資金を米国への手土産にする──。もしそんな事を内閣で考えているとすれば、国民の怒りが沸騰するのは明らかだ。どうやらこの話、安倍首相には寝耳に水だったようで、答弁でも「(新聞では読んだが公の場では)初めて聞いた」と答えている。

 GPIFを管轄する塩崎恭久・厚生労働相も答弁に立ち、「GPIFの運用方針そのものの中に政治判断が入るということはない」という模範答弁をしていたが、GPIFの運用と米国への協力を結び付けたことに、「うち(厚生労働省)から出た話ではない」と憤っていたようだ。答弁には立たなかったが、麻生太郎・副総理兼財務相も「筋の悪い話」と切り捨てていた、という。

米インフラに兆円単位で投資される可能性はある

 分かりにくいが、GPIFの高橋理事長がコメントで「事実はない」としたのは、「経済協力」としてGPIFのカネを使う事実はない、という意味で、インフラ投資をしないと言っているわけではない。高橋氏は国会答弁で、すでにインフラ投資を行っており、2015年度末で時価総額814億円分を投資、6億円の利益が出ているとした。そのうえで「(法律で)認めていただいておりますのは全体の5%、恐らく7兆円前後の金額が投資可能だ」と答えている。

 つまり、政府が指示するかどうかは別として、米国のインフラに日本国民の年金資産が兆円単位で投資される可能性は「ある」わけだ。そうなれば、「結果的に」米国経済に協力することになる。

 日経新聞の記事は誤報ではない。どうやら、ネタ元は経済産業省。首脳会談に同行する予定だった世耕弘成・経済産業相の周辺から情報が流れたようだ。世耕氏は経産相に就く前の官房副長官時代にはGPIFの運用ポートフォリオ見直しなどに関与していた。世耕氏に花を持たせようとした官僚が話を分かりやすく膨らませて話したのだろう。