少なくとも今は、監査制度が根幹から揺らいでいる危機の時である。EUで導入を決めている事がなぜ日本でできないのか。悠長にメリットとデメリットを比較している時ではないだろう。

 懇談会で、監査法人が抵抗する法人ローテーションの導入を決められなかったのは、懇談会のメンバーが「監査法人に近すぎる」人たちで構成されていた事も一因だと思われる。金融庁が懇談会を非公開にしたのは、会合を公開にした場合、大半のメンバーがローテーションに反対して制度導入が頓挫しかねないと考えたためかもしれない。

(出所:金融庁)

 いずれにせよ、提言に「我が国においても有効な選択肢の一つ」という文言を入れ、法人ローテーションが消えずに残っただけでも、制度導入推進派の勝利ということかもしれない。

 同じ3月8日、自民党の金融調査会(会長、根本匠衆院議員)と企業会計に関する小委員会(小委員長、吉野正芳衆院議員)が合同会議を開いて、「質の高い会計監査の確立に向けた提言」をまとめた。金融庁の懇談会と完全に平仄(ひょうそく)を合わせており、監査法人のガバナンスコードの策定などを求めている。

 従来から国会議員は不正会計を見逃した会計士などへの罰則強化を主張する人が多い。今回の自民党の議論でもそうした意見が多く出され、「不正会計の抑止力としての罰則の役割を再認識すべき」とする指摘も盛り込んだ。

東芝問題への国際的なけじめを

 また、法人ローテーションについてはメリットとデメリットを併記したうえで、「当局がしっかり調査・分析を行い、判断することが重要」とゲタを預けた。

 自民党と政府は、5月から6月に向けて、成長戦略の改訂を公表するが、そこに会計監査の質的向上に向けた施策が盛り込まれる予定。最終的には安倍晋三首相や閣僚たちの意見も反映されることになる。

 安倍内閣は2014年の改訂で「コーポレートガバナンスの強化」を打ち出しており、東芝問題への「けじめ」を海外投資家に示す必要があると考えている模様だ。年明けから海外投資家の日本株売りが続いており、これを反転させることが日本の株価にも大きく影響する。

 改訂の発表タイミングは参議院選挙の前に当たっており、海外投資家の買いを呼び株を押し上げる「弾」を仕込みたいという思いが強い。

 監査法人へのローテーション義務付けは国内の大監査法人の間には反対論が依然として根強いものの、海外投資家には分かりやすい施策だ。政治主導によって成長戦略にどこまで踏み込んだ表現で書き込まれることになるのか。注目される。