仙台などでは被災地産品を販売するイベントが開催されるが、復興は道半ばだ(写真:共同通信社)
仙台などでは被災地産品を販売するイベントが開催されるが、復興は道半ばだ(写真:共同通信社)

震災復興「特需」は1年限り?

 東日本大震災から7年。この間、宮城県や福島県を中心とする被災地の復興に向けて、多額の国費が投入されてきた。住宅の再建や高台への移転、土地のかさ上げ、除染作業など、地道な活動が続いてきた。

 だが、被災によって壊滅的な被害を受けた地域ほど、コミュニティーが破壊され、住民は戻らず、経済活動は停滞したままだ。本当の意味での「生活復興」はできているのだろうか。

 福島県がまとめた「2015年度福島県県民経済計算」によると、県民所得は5兆4395億円と2014年度に比べて1.8%減少した。震災で2011年度には11%も減少したが、その後2012年度9.7%増、2013年度8.3%増、2014年度1.9%増と増加基調にあった。しかし2015年度は水面下に沈んだ。

 1人当たり県民所得も2015年度は284万2000円と、前年度に比べて0.7%減少した。4年ぶりの減少だ。県の報告書では「復旧・復興への取り組みを続ける中、製造業や卸売・小売業、建設業が減少したことから、全体として総生産が減少」したとしており、それが県民所得の減少に直結している。

 県民所得のデータは集計が終わるまでに時間がかかるため2015年度が最新だが、福島県など東北地方の経済は、その後も「息切れ」状態が続いているとみられる。

 端的に表れているのが消費だ。日本百貨店協会がまとめている地域別の百貨店売上高(年間)で「仙台」と「東京」の対前年比伸び率を比較すると、仙台が東京を上回ったのは2012年だけ。東京が2.1%増だったのに対して、仙台は7.7%増と、震災復興の「特需」に沸いた。

 ところが2013年は東京の3.5%増に対して仙台は0.4%増、2014年と2015年は東京がプラスだったのに対して、仙台はマイナスに落ち込んだ。2016年は東京の1.8%減に対して仙台は3.7%減である。

 住宅の再建や補修に伴う家具や家電製品、家庭用品の購入などは、震災後1~2年で影をひそめ、消費は沈静化していったことが伺われる。

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