つまり、同一労働同一賃金を突き詰めていくには、組合の形が根本から変わる必要が出て来るのだ。

 安倍首相はその点を十二分に分かったうえで、同一労働同一賃金を打ち出した、とみられている。「口では同一労働同一賃金と言っているが、民主党は本音では反対なのだから」と安倍首相は周囲に語っている。7月の参議院議員選挙に向けての「民主党封じ」が同一労働同一賃金を持ち出した本当の狙いだ、という見方もある。

 アベノミクスへの批判を強める民主党などが繰り返し主張するのは、「アベノミクスの恩恵は大企業や都市部の金持ちなど一部にしか及んでおらず、格差はむしろ拡大している」というもの。非正規雇用の待遇改善は、こうした批判を封じるためにも待ったなしの政策だというのである。

大企業に眠る優秀な人材を解き放て

 もし、それが本当の狙いならば、参院選が終われば同一労働同一賃金は掛け声倒れとなり、実効性の乏しい精神論だけでお茶を濁すことになるだろう。むしろその方が、経営者側も労働側もこれまでの慣行を崩さなくて済む。

 だが一方で、安倍首相は日本経済が直面する構造変化を真剣に考えたうえで、同一労働同一賃金を打ち出しているのだ、という声も漏れてくる。つまり、日本型の雇用慣行を根本から見直さなければ、日本経済の再生はないと見切っているというのである。少子高齢化が急速に進む中で、労働力不足は今後ますます深刻さを増してくる。

 終身雇用の名の下に、旧来型の大企業が優秀な人材を囲い込んでいる現在の体制を打破しなければ、日本企業の生産性を抜本的に向上させることは難しいという考えが、背景にあるというのだ。

 もしそうだとすれば、同一労働同一賃金は日本の経済社会を大きく変えるメガトン級の威力を持つことになる可能性もある。戦後長い間、日本人の働き方を決めてきた労使双方、つまり労働組合と経営者団体の双方のあり方を根本から揺さぶることになる。

 安倍首相がどこまで本気なのかは、参院選が終わった後に見えてくることになるだろう。