日本への輸出を増やしたい中国

 その日中貿易がここ2年ほど、変調をきたしている。日本から見た貿易赤字額が急速に減っているのだ。2016年は4兆6575億円の赤字、2017年は3兆5543億円の赤字だった。前述のように香港を単純合算した数字では、2016年は1兆2183億円の赤字、2017年は2152億円の黒字になった。つまり、日本からの輸入が増えたことで、中国は貿易黒字が稼げなくなっているのである。

 ここ2年ほど、習近平国家主席の安倍首相に対する対応が変化してきている背景には、そんな経済的な事情も一因に違いない。経済関係をより緊密にして、日本への輸出を増やしたいという思いがあるのだろう。

 そこを見透かしたように安倍首相は「一帯一路」への協力を申し出ているわけだ。

 日本はここへ来て景気回復が鮮明になってきた。実質GDPは8四半期連続でプラスとなった。8期連続プラスは28年ぶりのことだ。けん引役は輸出。全体の貿易収支は2016年、2017年と2年続けて黒字になった。2017年の貿易黒字額は2兆9857億円に及ぶ。

 輸出は78兆2907億円で、ピークだった2007年の83兆9314億円に近付いてきた。一方で輸入はピークだった2014年の85兆9091億円から10兆円も少ない状況が続いている。主因はエネルギー価格が安定して、原油やLNG(液化天然ガス)の輸入価格が落ち着いたことだ。だが、見方を変えれば、まだまだ日本は輸入力があるということになる。しかも、海外からの配当収入など所得収支は年々増えており、経常収支は大幅な黒字になっている。

 このままでは、貿易黒字批判が国際的に高まり、もっと内需を拡大して輸入を増やせという要求が強まることが想定される。中国にとっては、そんな上顧客がすぐ隣にいるわけである。

 日本にとっても中国との経済関係の強化は将来にわたって不可欠だろう。成長は鈍化したとはいえ、巨大な内需市場を持つ中国は、輸出先、投資先として魅力的だ。中国経済のバブルはいつか崩壊すると言われながら、先進国を上回るペースでの成長が続いている。民主党政権時代の尖閣諸島問題などでとことん冷え込んだ日中の政治関係が、着実に改善に向かえば、経済関係を再強化するムードが高まることは間違いない。

 中国が「大きな方向性」に理解を示し、「自由で開かれたインド太平洋」という概念を受け入れ、さらに「自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国」へと変わっていくならば、間違いなく日中関係は改善し、アジアの経済はさらに成長を加速させるに違いない。「地球儀を俯瞰する安倍外交」の行方は日本経済にも大きな影響を与えることになる。