5年間かけて「中国包囲網」を構築

 施政方針演説で中国に触れる前段がある。首相就任から5年の間に76カ国・地域を訪問し、600回の首脳会談を行ったことを強調。「地球儀を俯瞰する外交」を展開してきたと述べた。安倍外交の基本が、「自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携する」点にあることを明確に示し、「米国はもとより、欧州、ASEAN、豪州、インドといった諸国と手を携え、アジア、環太平洋地域から、インド洋に及ぶ、この地域の平和と繁栄を確固たるものとしてまいります」とした。

 さらにこう述べている。

 「太平洋からインド洋に至る広大な海。古来この地域の人々は、広く自由な海を舞台に豊かさと繁栄を享受してきました。航行の自由、法の支配はその礎であります。この海を将来にわたって、全ての人に分け隔てなく平和と繁栄をもたらす公共財としなければなりません。『自由で開かれたインド太平洋戦略』を推し進めます」

 そうした「大きな方向性」の下で、中国の「一帯一路」と協力すると言っているのだ。

 安倍首相が5年間の間に真っ先に緊密な外交関係を結んだのはインド、トルコ、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランドといった中国を取り巻く国々だった。ロシアのプーチン大統領との関係も、G7(主要7カ国)の首脳の中では安倍首相が最も良好だ。5年かけて中国包囲網を構築し、そのうえでいよいよ中国と、是々非々で友好関係を再構築しようというわけだ。

 中国主導の「一帯一路」に無条件で組み込まれるのではなく、あくまでも「自由で開かれたインド太平洋戦略」という枠組みの延長として一帯一路に協力しようというわけだ。もちろん、「自由で開かれたインド太平洋」に南シナ海が含まれることは当然だ。南シナ海での中国の進出はこの地域の経済的な安定にはプラスにならないという事を明確に主張しているのだ。

 長い間、日中関係は「政冷経熱」と言われ、政治的には冷え込んでいる一方で、経済関係はより緊密になっている、とされてきた。財務省の貿易統計では、リーマンショック後の2009年に11兆4359億円にまで減った中国からの輸入額は2015年には19兆4288億円にまで増えた。日本側からみた対中貿易収支は2015年には6兆2054億円の赤字となった。中国は対日貿易で大きく稼いでいることを示している。

 実は中国側の統計では、対日貿易は中国側が赤字ということになっている。理由はいくつか考えられるが、最も影響が大きいとされるのが香港要因。香港を経由する日中貿易の統計が、日本から輸出する場合は「香港向け」となっている事が大きいとされる。

 実際、香港との輸出入をみると、2015年の輸出が4兆2359億円なのに対し、輸入はわずか2274億円だ。香港向け輸出の多くが最終的に中国に向かっているのは想像にかたくない。対香港の輸出入を単純に中国に加算した場合、2015年の日本の貿易赤字額は2兆1969億円になる。6兆円が3分の1になるわけだ。それでも中国にとって日本が重要な貿易相手国であることは間違いない。