
135兆円にのぼる国民の年金資産を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の改革論議が進んでいる。理事長に権限が集中する現状の独任制を改め、運用の専門家らによる合議制に移行することや、GPIF自身が直接日本株に投資する自主運用の解禁などが焦点になってきた。
GPIFのあり方を議論する厚生労働省の社会保障審議会年金部会では2月8日までに、合議制への移行が承認される一方、自主運用の解禁には異論が噴出し、最終決着は政府・与党による政治決断に持ち越された。GPIF自身や厚労省、首相官邸などそれぞれの思惑が交錯する中で、GPIF法改正案が今国会に出せるかどうか微妙な情勢が続いている。
まず1つ目の論点だったのがGPIFの組織体制、いわゆるガバナンスのあり方について。昨年来、水面下で思惑が対立し、年金部会自体がまったく開かれない異常事態が続いていたが、昨年末の段階で、急転直下、合議制への移行が決まった。
もともと、GPIFの運用ポートフォリオ(資産構成割合)見直しとガバナンス改革は「車の両輪」だとしてきた塩崎恭久厚労相と、独任制を残したい一部の年金官僚が激しく対立。ポートフォリオ見直しは2014年10月に先行して行われたが、ガバナンス改革は遅々として進まなかった。年金官僚が官邸と結び付いて抵抗したことが要因だった。
年金官僚がGPIFの合議制に抵抗したのは、何としてもGPIFを厚労省傘下の独立行政法人に留めておきたかったため。巨額の運用資産を持つGPIFの方針決定に厚労省が関与することで、大きな利益を保持してきたことは想像に難くない。それを手放すことに強く抵抗したわけだ。
合議制でも仕切るのは厚労省
それが昨年末になって急転直下、年金官僚も合議制への移行に賛成したのだが、それには訳があった。「独立行政法人のままでも合議制は可能」という“新解釈”を霞が関がひねり出したのである。
まだ世間には、合議制に変えた場合、GPIFは政府や厚労省から独立した新組織になるという見方が残っているが、実は、厚労省傘下の独立行政法人で厚労相が最終責任者、つまり厚労省がすべてを仕切るという現状が維持されることになったのだ。
こうした流れを背景に年金部会でも「合議制」への移行が意見の大勢を占めるに至ったが、「合議制」の中味自体については同床異夢の点が残っている。ガバナンス強化を主張する塩崎厚労相は、日本銀行の政策委員会をイメージした「運用のプロ」による合議を考えているものの、経団連や連合などは、年金資産の出し手であるステークホルダーによる合議制を考えている。
つまり、労使の代表として経団連の代表や連合の代表が入るのは当然だ、という主張を展開している。確かに135兆円は国民の資産だから、そのステークホルダーとなると一般国民の代表がメンバーになることもあり得る。そうなると塩崎大臣が想定する「プロの合議体」とは似て非なるものになる可能性が高い。
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