「しまなみ海道」の自転車ツアーが人気に

 その鍵を握るのが「コト消費」をどれだけ広げられるか、だろう。いわゆる体験型などのイベントにどれだけお金を落としてもらえるか、そうした仕組みを作れるかが焦点になっている。観光庁の統計で言えば、「娯楽サービス費」の消費をどれだけ増やせるか、にかかっている。

 全地域の娯楽サービス費の平均は、前述の通り一人当たり5014円で、支出総額15万3921円の3%に過ぎない。逆に言えば、まだまだ伸ばせる余地が大きい。演劇やイベントの鑑賞では、歌舞伎や相撲といった日本の伝統的なものから、世界中の一流のアーティストの公演を日本に行けば体験できる、といったアピールが不可欠だろう。最近では日本で開く美術展などに多くの外国人観光客を見かけるようになった。日本に来れば経験できること、日本に来なければ経験できないことを「用意」することが大事だ。

 最近は本州と四国を結ぶ「しまなみ海道」を自転車で走るのが欧米系外国人の人気になっている。何せ、自転車の上から日本の景色を堪能することは日本に来なければ絶対にできない。全国各地にツーリングコースを整備するなどまだまだやることがたくさんある。さらに、フランスの自転車競技ツール・ド・フランスのようなイベントも重要だろう。

 また、日本各地のお祭りや伝統芸能などもまだまだ外国人に売り出せる。さらに、日本の農村や漁村での生活体験など、日本にやって来なければできないものを用意すれば、外国人観光客はどんどんやってくる。地域を自ら売り出す創意工夫が不可欠だ。

 フランスに年間8000万人以上の外国人客が押し寄せていることを考えれば、日本で4000万人を定着させることは可能だ。東京オリンピック・パラリンピックの年の「一過性」ではない、いや、一過性にしないためにも、「コト消費」の拡大が不可欠だろう。

 では、増え続ける訪日外国人客に、「死角」はないのだろうか。

 最大の懸念は、為替が一気に円高に振れることだ。訪日客増加のきっかけが円安だったことで分かるように、旅行ブームの中で「日本」を選ぶかどうかの一つに「費用」があることは間違いない。他の地域に比べてあまりにも割高になれば、旅行先として敬遠される。

 日本経済がデフレから脱却しつつ、徐々にインフレ傾向が強まれば、商品やサービスの価格が上がってくる。オリンピック景気が盛り上がれば、宿泊料金などはさらに上昇するだろう。そこに為替の円高が加われば、旅行代金が跳ね上がり、一気に日本旅行ブームが雲散霧消するリスクが漂う。

 アベノミクスの大規模な量的緩和政策には批判が強く、「出口戦略」を示すべきだと言った声も大きい。だが、他国の状況を見極めずに「出口」に向かって動き出せば、為替が円高になる可能性が強まる。実は、アベノミクスの1本目の矢を維持し続けられるかどうかが、訪日客4000万人、消費8兆円達成への鍵を握っている。