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国の債務の支払い順位を決めるべきだ

 景気を良くすれば税収は増える、と言う安倍首相や安倍シンパの経済学者の「路線」に財務省は抵抗したのである。財務官僚は、財政再建がしたいのではなく、ただ増税がしたいのではないか、という疑念が安倍首相の周囲で高まった。以来、財務省が排除される結果になったわけだ。

 財務官僚の政権への影響力が小さくなる中で、財政再建を本気で安倍首相に進言する人たちがいなくなった、という副作用が生じている。歳出削減は政治のリーダーシップがなければできないのに、首相が関心を示さない、という事態に直面している。税収が増えて歳出を見直す好機なのに、税収増を再び歳出に振り向ける大盤振る舞いに陥ったのだ。PB黒字化の新目標とした2025年には別の人物が首相の座に就いているだろうから、PB黒字化も達成できるか分からなくなっている。

 では、どうするか。「国家破綻処理法」を作るべきだ。

 会社は倒産した場合、誰の債権が優先されるか順番が明らかになっている。国への税金支払いが最優先で、その次は労働債権、つまり未払いの給与などが優先される。その次が一般の債権で、金融機関などが引き受けている劣後債はそれよりも支払い順位が低い。もちろん破綻すれば株式価値は毀損し、最悪、紙切れになる。

 国が破綻した時、誰が最も損をするのかがはっきりしていないのだ。例えば、米国の場合、予算が確保できなければ真っ先に政府が閉鎖される。2019年の年頭にも続いているガバメント・シャットダウンである。つまり政府で働いている職員が収入の道を断たれることになる。日本の場合、国はどんどん国債を発行できるので、政府機関が閉鎖されるルールはない。しかも公務員には身分保障があるから、クビになることもない。仮に国が破綻したとしても、公務員の未払い給与や年金はカットするルールにはなっていない。

 国の債務で何が最も優先されるのかを支払い順位を決めておくことが重要だろう。外国人投資家も保有している国債をデフォルトさせることは難しいと考えて、最優先債権とするのもよい。次には国民への社会保障費が優先されるべきだろう。公務員の給与はその次だろうか。国が破綻した場合、当然、公務員はリストラされることになる。もちろん政策経費もゼロベースから見直すことが必要だろう。

 誰もそう簡単に国が破綻するとは思っていない。だが、国を破綻処理して再生軌道に乗せる作業をした場合、誰が最も損をし、誰が守られるのか、を明確にしておくことは意味がある。

 仮に、公務員は全員クビになり、公務員年金も支払われない、ということになれば、官僚たちは本気で国家財政を破綻させないようにするにはどうすべきか、を真剣に考えるに違いない。

 人事制度でも、財政再建に力を振るった官僚が多額のボーナスをもらえるようにするなど、財政再建のインセンティブを作ればよい。そんな頭の体操をするためにも破綻処理のやり方を考えておくことは重要ではないか。

磯山友幸の「政策ウラ読み」をお読みいただいていた方々へ

 2012年11月から6年にわたって隔週で書いてきたこのコラムも今回で最終回となりました。長年にわたってお読みいただいた方々に心より感謝申し上げます。その時々の政策テーマを取り上げてきましたが、新聞や雑誌ではなかなか1つの政策について報じられることが少なかったので、多くの皆さんに議論していただくきっかけを提供できればと考えて記事を書いて参りました。

 会社の主張とは異なる意見でも自由に発表する場を与えていただいた日経ビジネスオンライン編集部、そして歴代の担当編集者に心よりお礼を申し上げます。

 また、2016年4月からやはり隔週で執筆しておりました「働き方の未来」も2018年末をもって終了いたしました。こちらもご愛読いただきまして、ありがとうございました。