これに対して、夕刊紙や週刊誌などが一斉に批判の声を上げた。「年金運用の失敗」「わずか3カ月で8兆円の損失」「8兆円がパー」といった記事があふれたのである。

 現実には株式の時価評価額が目減りしたことが主因だが、ポートフォリオを株式にシフトしたことで、自分たちの年金資産が大きなリスクに晒されるようになっていることに、多くの人たちが気づいたのである。

 内閣が株価を支えるためにGPIFが運用する国民の資産をリスクにさらしている――。そうした批判を避けるためにも、専門家の合議制による意思決定というガバナンス体制への移行が不可欠だったのだ。

 1月4日から国会審議が始まれば、野党から追及を受けるのは必至。その前に、何としても改革の方向性を固めておく必要があり、急きょ年金部会を開いて大筋での了承を得たのだ。

 ちなみに塩崎厚労相は安倍首相にも事前に説明したほか、官邸のメンバーにも根回しをし、政治的な対立は解消された。

 もっとも、これでGPIFのガバナンス改革が最終決着したわけではない。GPIFを独立行政法人から他の特殊法人などに変更するには、当然、法案を国会で通過させなければならない。組織形態などの細部は今後詰めていくことになるため、今国会に法案が出せるかどうかは未定という。

 参議院議員選挙もあり、国会会期は6月までで延長がない見通しで、今国会でGPIF改革法が可決成立する公算は小さい。

できあがったのは「イメージ」のみ

 参議院議員選挙後には内閣改造が行われる可能性もあり、在任2年になる塩崎厚労相が交代することも考えられる。GPIFのガバナンス改革に旗を振って来た大臣がいなくなると、議論が元の木阿弥になることもあり得る。

 何せ年金部会で了承されたのは「GPIFガバナンス強化のイメージ」である。素案でも骨子でもない。厚労省には運用に対する実質的な指揮権限を持ち続けたいと考える官僚も少なからずおり、独立行政法人でなくすことへの抵抗もまだまだある。

 「イメージ」の中でも厚労相の責任などが強調され、大臣の許認可権限を維持することは明示されている。役所として許認可権限を握り続けるという意思が示されているわけだ。

 いつになれば、年金加入者の利益を第一に考える国際水準の運用ガバナンス体制ができあがるのか。まだまだ予断を許さない。