拉致問題の進展は期待薄
日本の拉致問題について、習国家主席は金委員長に「拉致は日朝2国間の懸案で、米朝会談の議題ではない」と忠告した。このため北朝鮮は、米朝首脳会談の議題を調整したポンペオ国務長官に「拉致問題は議題にしない」との立場を示し、譲らなかったという。このため、米朝首脳会談で「拉致問題は話し合わなかった」というのが北朝鮮の公式の立場だ。
こうした平壌の空気と金委員長の意向を受け、北朝鮮の高官は誰も「拉致問題解決」「日朝首脳会談」を進言できない状態にある。金委員長に直言できるのは、妹の与正(ヨジョン)氏と秘書室長の金昌善氏だけという。北朝鮮の高官は、秘書室を通してしか金委員長に報告・進言できず、面会もかなわないという。平壌のシステムも、金正日時代とは様変わりし、秘書室が全権を掌握している。
習氏「朝鮮は、何度も中国に裏切られた歴史を忘れないだろう」
首脳会談での中朝首脳の発言は、にわかには信じがたい驚愕の内容だ。しかし、最近の北朝鮮の外交姿勢をみると、変化に至った背景と米中朝外交の「流れの変化」を十分に理解できる。
トランプ大統領は、中朝が最初の首脳会談を行った直後に「中朝首脳会談後に、北朝鮮は姿勢を変えた」「完全な非核化に期限は設けない」「習近平国家主席は世界的なポーカーの名手」と発言した。また、ポンペオ国務長官も「交渉は長期化する」と、見通しを変えた。米国首脳陣による一連の発言は、中朝首脳会談の議事内容をホワイトハウスが入手した事実を、強く示唆している。あるいは、中国側が意図的にリークしたのかもしれない。
習国家主席は、巨額の経済支援を約束した上で、「北朝鮮は中国の属国になることを心配するだろうが、そうしたことはしない。中朝の歴史関係を十分に理解している」と語ったという。「北朝鮮が中国に反発するのも理解している。北朝鮮は、何度も中国に裏切られた歴史を忘れないだろう」とも述べたという。
そのうえで、「米朝の関係を改善してもかまわない。中国に隷属することなく独立を維持するために米朝関係を重要視する、という朝鮮の戦略を十分に理解している」との認識を示した。習国家主席が示したこの理解に、金委員長と幹部たちは心を動かされたという。
Powered by リゾーム?