
ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩委員長は12日、シンガポールでの会談後、共同声明に署名した。共同声明には、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)への合意はなく、多くの失望と批判が聞かれる。
トランプ氏は、金正恩委員長が直面する北朝鮮軍部からの圧力に理解を示し、同委員長を追い詰めなかった。同委員長に「北朝鮮の完全な非核化」を約束させたのは、成果だ。二人はともに、国内での懸案を解消するため、「歴史的」会談を「ライブ中継」する演出を必要としたのだった。
首脳会談の真実は、冒頭40分間の二人だけの会談に隠されている。二人だけで何を話したのか。他の閣僚や高官に聞かせたくない本音を、語り合った。金正恩委員長が会談の冒頭でした発言は異例だった。緊張した表情で口を開くと、次の言葉が飛び出した。
「ここまで来るのはそれほど容易な道ではありませんでした。我々には足を引っ張る過去があり、誤った偏見と慣行が時に目と耳をふさいできたが、あらゆることを乗り越えてここの場にたどりついた」
会談の最後にもう一度、「我々は足かせとなっていた過去を果敢に克服した」と、感慨深げに語った(日本経済新聞6月13日朝刊)。
この言葉が何を意味するのかは、明らかだ。トランプ大統領が5月24日に発した「会談中止」騒動を指しているのではない。「足を引っ張った」のは誰なのか、明かに北朝鮮の国内事情や歴史、国際認識、「抵抗勢力」の存在である。「様々な障害」は、北朝鮮軍部を中心とした「抵抗勢力」の存在を、意味する。だから、首脳会談直前に、軍首脳3人を入れ替えたのだ。北朝鮮軍部の「抵抗」を抑えて、シンガポールまで来た事情を理解するよう、金正恩委員長はトランプ大統領に求めたとみられる。この思いが同大統領に伝わった。
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