そうなると、米国が単独で行動することになる。

宮本:その時、対話の道を取るのか、軍事行動を選択するのか、それは分かりません。

 仮に対話の道を選ぶと、北朝鮮が少なくとも当分の間、核兵器を保有することを前提として、その条件を話し合うことになります。日本や韓国にとっては最悪です。受け入れることはできないでしょう。

北朝鮮はかつて、「朝鮮戦争を終結させる米朝平和条約に米国が同意するならば、核兵器を放棄する」と言っていました。これに沿った合意はもうあり得ないわけですか。

宮本:北朝鮮では、その案をすでに言わなくなっています。北朝鮮では、金正日総書記が死亡して以降、「核大国」となることをスローガンとし、「核保有国」であることを憲法に明記しました。金正日総書記の死去は、むしろ核問題の解決を困難にすることになりました。

 さらに、2013年に3回目の核実験を実施すると、「核を取り引きの道具にしてはならない」と方針を改めています。核兵器の放棄を条件に、北朝鮮が平和条約や不可侵条約を締結する可能性は、もうほとんどないといえます。

そうなると、どのような対話が行われる可能性があるでしょう。

宮本:北朝鮮側の目的としては、米国を標的としないことを条件に、北朝鮮の核保有を認めさせる。在韓米軍は撤退させる。というところでしょうか。もし、在韓米軍が撤退すれば、THAAD (地上配備型ミサイル迎撃システム)も当然撤去することになります。これは、米国が韓国を見捨てるということです。

 同様に、日本も実質的に見捨てられることになりかねません。北朝鮮が日本を攻撃の標的としているのに、米国が北朝鮮と戦わないのであれば、日米同盟の破綻ということになる可能性もあるのです。

そうなると、日本と韓国で核武装論が盛り上がることにつながりませんか。

宮本:当然、そうなるでしょう。それが自然だと思います。

 韓国のある世論調査では、核武装に「賛成」との回答が60%以上に達しています。ただし実現するのは難しい。核実験をする場所も非常に限られてきます。

 日本でも議論が起こるでしょう。何もしないで力の空白を作れば、それこそ北朝鮮からの攻撃を誘発して、戦争が起こる可能性を高めることになります。ただ、日本の場合には、在日米軍が駐屯する限り、独自の核抑止力よりも日米同盟の再構築で乗り切ることになると思います。

韓国は自主防衛力を強化へ

文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮にどのような方針で望むでしょう。

宮本:北朝鮮の核・ミサイル開発を脅威と認識している点は、保守の朴槿恵政権と変わりません。

 加えて、安全保障面では、自主国防力を強化する方向に向かうと思います。韓国の進歩派は民族主義が強く、反米もしくは離米の考えが強いので、米韓同盟に不信感を抱く傾向が強いのです。このため、自主国防を望みます。金大中、盧武鉉の進歩派政権はいずれも国防費を増額しました。

 仮に核武装という案が出た場合、保守派よりも、進歩派である文政権の方が積極的になることが考えられます。

 ただし、文政権は北朝鮮との交流も進めていくと思います。民族主義が強い韓国の進歩派にとって、自主国防力を高めることと、同じ民族である北朝鮮との交流を進めることは矛盾しません。北朝鮮も同じく民族主義が強いので、核兵器を開発して自主国防力を高めることと、同じ民族である韓国と交流することは矛盾しないのです。

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