ハワイに寄港する米原子力空母を北極星で狙うことはあり得ないでしょうか。原子力空母が破壊されれば、巨大な原子力発電所が爆発し放射能漏れを起こすのと同様の被害が生じかねません。こうした脅威を作るだけでも、抑止力となる。

宮本:ハワイに停泊する原子力空母を弾道ミサイルで狙うのは、目をつぶって針の穴に糸を通すような行為です。そうとうに困難なのではないでしょうか。

 それに、すでに核兵器を保有しているならば、原子力空母だけを狙うのはあまり意味がありません。核兵器は、ほとんど瞬時に、一つ以上の都市を壊滅させて、何十、何百万という犠牲者を出すことができる大量破壊兵器なのです。核兵器の脅威は、放射能よりも、その驚異的な熱と爆風などによる破壊力なのです。そのような兵器を原子力空母の攻撃のために使うのは無駄なことです。

韓国では「4月危機説」が流布していた

北朝鮮のミサイル開発は日本にとってはどの程度の脅威に成長しているのでしょう。4月29日 にミサイル実験があった時、東京の地下鉄が止まりました。一方、ソウルの地下鉄は通常通り運転していた。日本は考えすぎだ、という意見があります。

宮本:北朝鮮のミサイルは日本にとって、すでに十分な脅威です。

 東京の地下鉄を止めたのは、北朝鮮の核攻撃を想定した練習だった--と考えるとそれほどおかしなことではないと思います。核の爆発が起こると、その後、非常に強い電磁波が生じて、電子機器が急に使用できなくなることが想定されます。地下シェルターとしての地下鉄の役割を考えれば、2次災害を防ぐために地下鉄を止めておくことは必要です。もちろん、実際に、地下鉄を止めたのは、そこまで考えてのことかは分かりません。

そうだとすると、韓国はなぜ落ち着いていたのでしょう。

宮本:韓国政府が「4月危機」を否定していたことが要因の一つと考えられます。米国のレックス・ティラーソン国務長官が3月17日 に、オバマ政権が取ってきた「戦略的忍耐は終わった」と明言しました。「あらゆる選択肢を検討している」 とも発言し、先制攻撃を排除しない意向であることも示唆しました。これに伴い米国が北朝鮮を攻撃する可能性が一挙に高まりました。そして、「4月に米国が北朝鮮を攻撃する」という懸念が韓国のネットでも流布しました。それを韓国政府は、「根拠がない」といって、打ち消しにかかっていました。

韓国の国民は政府をかなり信用しているわけですね。

 信用しているかどうかは分かりませんが、たいていの人は、安心できる情報があればそれに飛びつくほど弱いものです。そして、何もしなくていいための言い訳とするのです。

北朝鮮の核・ミサイル保有がうながす韓国の核武装論

次の核実験がいつ行なわれるか、不安が高まっています。

宮本:いつかは行なわれるでしょうね。でも、いつかは分かりません。何かしらの記念日に合わせて実施するという見方がありますが、実例は過去に1度しかありません。2016年9月9日 の建国記念日に5回目の核実験をした時だけです。

 そもそも、核実験と政治的意図を結びつけて考える必要はないのです。「核の開発に成功した=抑止力を保有した」ことさえ示せば十分なのですから。したがって2006年に最初の核実験に成功して以降の実験は、技術力を高めることと、実戦で使用できる核兵器があることを内外に示すことに意味があると思います。記念日に合わせる必要はありません。

次の核実験が行なわれたら、米中をはじめとする周辺国はどのように反応するでしょう。

宮本:中国の制裁に効果がないと米国は認識すると思います。

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