独立はカネに代えられない

米中首脳会談後の米中に反発してミサイル実験の頻度を増した。北朝鮮はこのコストに耐えられるのでしょうか。北朝鮮の資金を枯渇させるべく、米国が挑発して北朝鮮に実験をさせているとの見方もあります。

宮本:外貨が必要にならない限り、資金的な問題はないと見ています。確かにコストはかかっているでしょうが、国内で賄える範囲なら大丈夫でしょう。北朝鮮は、鉄をはじめとする鉱物資源は豊富です。石油も少しは産出します。ミサイル実験に回すくらいの燃料はあるでしょう。人とその労力は問題なく国内で調達できます。

 外貨が必要な部分もあるかもしれませんが、そもそも「国の独立・存亡がかかっている」と考えているのですから、財政に大きな負担となっても核兵器とミサイルの開発を続けるでしょう。

 ただ、北朝鮮に対する対話や制裁が不要と言っているのではありません。対話で解決の糸口を探ることは、北朝鮮の緊張を下げることに役立つでしょう。また、制裁を受けることで北朝鮮にとって経済的な負担が大きくなるのは間違いありません。ですから、北朝鮮の軍事力を削ぐためにも制裁はますます必要なのです。

米本土に届かないミサイルを実戦配備する意味

度重なるミサイル実験を振り返って、開発面や技術面で注目すべきことはありますか。

宮本:米国本土まで射程が届かない「北極星」を実戦配備すると明言したことです。

 北朝鮮は今、2種類のミサイルを別々のチームが担当し、競い合うように開発しています。一つは「火星」、もう一つは「北極星」です。火星は現在は液体燃料を使用。発射台から直接発射する「ホットローンチ」方式を採用しています。液体燃料なので実戦使用では少々難があるのですが、推力に優れています。

 これに対して北極星は固形燃料と「コールドローンチ」を採用するものです。コールドローンチは潜水艦発射型ミサイルでよく使用される方式。圧縮ガスを使い、ミサイルをいったん空中に押し上げた後、ロケットエンジンに点火します。こちらは固形燃料なので実戦での使用は容易。ですが、推力では劣る。北極星2型の現在の射程はハワイやアラスカにとどまると北朝鮮は公表しています。

 それでも金正恩委員長はこれを大量生産し地上に実戦配備することを明らかにしました。この意図に私は注目しています。「北極星2型でも抑止力になる」と判断したか、抑止力としては不十分でも「当面の処置」として配備すると判断した、のいずれかと考えられるからです。

 北極星2型はニューヨークやワシントンには届きません。したがって米国が北極星2型を脅威とは見なすとは限りません。中心部を守るために地方を切り捨てる--歴史を振り返れば、国家がこうした冷酷さは示す例をいくつも発見することができます。米国が脅威と認識しない核ミサイルは抑止力になりません。抑止力が成立するかは米国の認識しだいです。

北極星を潜水艦に搭載することはありませんか。米国に気付かれないように太平洋に出て行く。そうすれば、射程距離の短さを補うことができます。

宮本:北朝鮮は核を搭載して潜行作戦を展開できる潜水艦を持っていません。これには燃料の補給がいらず、水面に浮上する必要がほとんどない原子力潜水艦が必要です。水上に出る回数が多いと米国側に場所を探知されてしまいます。

中国が原子力潜水艦を北朝鮮に提供することはありませんか。

宮本:それはないでしょう。

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