在韓米軍の大幅削減をのむ

第3のシナリオはどのようなものでしょう。

道下:これは、北朝鮮が「核兵器をすべて廃棄する」のと交換で、米国が、韓国の防衛に対するコミットメントを低下させるシナリオです。これが実現する可能性は35%。

 トランプは以前から韓国の「防衛ただ乗り」を批判し、在韓米軍の縮小を示唆しています。加えて、北朝鮮の核兵器がなくなり、南北関係が改善に向かうわけですから。

米国が在韓米軍を撤収させるのですか。

道下:そこまではいかないでしょうが、兵力を大幅に削減する、あるいは有事駐留のような形にすることはあり得ます。平時は司令部機能などに限定し、有事が生じたら本格的な戦力を動員する。

 韓国が拒否しなければ、この方向に進むでしょう。一方、韓国が米国に現状維持を求める場合には、駐留経費の負担増を求めたり、米韓自由貿易協定でさらに米国に有利な条件を出すよう求めたりするかもしれません。

韓国の安全保障が危機にさらされることになりませんか。

道下:おっしゃるとおりです。なので韓国が保守政権ならあり得ない話です。保守派は米韓同盟の守護者であることをもって韓国政治の本流を任じてきました。

 しかし、進歩派の文在寅(ムン・ジェイン)政権ならやりかねません。国家の安全よりも、内政面で保守派を追い落とすことを優先する。前大統領の朴槿恵(パク・クネ)と元大統領の李明博(イ・ミョンバク)が逮捕され保守派はおぼれた犬の状態にあります。これにとどめを刺す。

 国家の安全保障よりも内政を優先する政治を韓国はこれまでも何度か繰り返しています。

韓国の防衛メカニズムが弱体化するのを待って、北朝鮮は軍事的に半島を統一するつもりでしょうか。

道下:いえ、北朝鮮にその能力はありません。武力統一は夢のまた夢です。韓国もそう考えています。韓国の国防費は392億ドルで世界第10位(2017年)、ミサイルも1000発以上持っています。独力でも相当のことができます。だからこそ、文政権は在韓米軍のプレゼンス低下をのむことができるのです。ただし、島々への砲撃などの限定的な武力行使は容易になるでしょう。

現行の在韓米軍はどれほどの役割を果たしているのでしょうか。

道下:北朝鮮が韓国に本格的な攻撃をかけた場合、韓国軍は単独でも最終的には勝利できるでしょうが、かなりの被害を覚悟しなければなりません。米軍が駐留していれば、比較的短期間に、被害が小さいうちに反攻することができます。また、米韓同盟の圧倒的な力により、北朝鮮を確実に抑止できます。

在韓米軍は日本にとってはどのような価値がありますか。

道下:在韓米軍が撤収し、韓国が中立化する。これはすなわち、韓国が中国に取り込まれることを意味します。「衛星国になる」とまでは言いませんが、中国の影響を非常に強く受けることになるでしょう。在韓米軍がいる現在ですら、韓国の立ち位置は定まりません。在韓米軍がいなくなった時にどうなるかは推して知るべしと言えるでしょう。

 韓国の名目GDPは1兆4112ドルで世界11位(2016年)です。これだけ大きな力を持つ国が中国の側につくのは、日本にとっても非常に大きな問題です。

そうした事態になれば、日本にとっての防衛ラインが南北を分かつ38度線から対馬海峡に後退するという見方がありますね。

道下:その通りだと思います。

 私は、米韓同盟弱体化の方向で中朝が合意したと見ています。

朝鮮半島における米軍のプレゼンスが低下し、韓国がより親中になれば、中国にとっては願ったりかなったりですね。必然的に中国のプレゼンスが高まるわけですから。

道下:その通りです。ただ、この話を韓国でしたところ、「中国の脅威に目覚めた韓国が、米国や日本との関係回復に乗り出すのでは」という意見がありました。中国から難題を突き付けられたり、北朝鮮が増長したりするからです。

 韓国では、保守派の基盤層が有権者の35%、進歩派の基盤層が25%ほどを占めるそうです。保守派はまだ滅んではいない。

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