経済建設を担う朴奉珠

 「経済発展5カ年戦略」を打ち出したとはいえ、計画経済の方針を捨てたわけではない。従来の「内閣中心制」を続けることも第7回党大会で示された。これは内閣が中心となって経済建設を実行する制度で、金正日の時代から行われてきた。その意味では、計画経済の中心となっているのは内閣であるという建前になっている。

 現在の内閣首相は、朴奉珠(パク・ポンジュ)である。彼は2003年に内閣首相に就任したが、2007年に突如更迭された。ただし、2010年には朝鮮労働党の役職(党軽工業部第一副部長)に就任しており、復権が始まっていた。そして、金正日の死後、2013年に彼は再び内閣首相に任命された。彼こそが、市場経済を一部容認してきた立役者の一人と考えられている。

 その朴奉珠は、当然に第7回党大会で朝鮮労働党の重要な役職に就くと目されていた。朝鮮労働党では、党中央委員会を構成する重要メンバーが各局や部、委員会に配置される。第7回党大会の直前まで政治局常務委員は金正恩、金永南(キム・ヨンナム)、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)の3名であったが、そこに朴奉珠と崔竜海(チェ・リョンヘ)が加えられた (関連記事「北朝鮮、総参謀長の党の要職解任は軍内の権力闘争」)。

 朴奉珠は、さらに党中央軍事委員会のメンバーにもなり、朝鮮労働党の軍事決定にも関わるようになった。おそらく軍需産業との関係があると思われる。

 この朴奉珠を朝鮮労働党の要職に就けたことは、朝鮮労働党とその最高指導者である金正恩がこう考えていることを示している――朝鮮労働党の経済建設において、社会主義自立的民族経済建設路線と計画経済の看板は維持しながらも、柔軟に市場経済を活用する。

金日成・金正日時代の“遺産”引きずりつつ新しい試み

 第7回党大会では、人事に関して他にもいくつかの変化があった。注目されたのは、金正恩の職位が変わったことである。彼は、従来の職位である党第一書記から、党委員長の地位に移った。ただし、これは何か権力や権威の大きな変化をもたらすためではなく、書記局が廃止されて政務局が新設されたためと考えられる。党委員長も、党第一書記と同様に朝鮮労働党における新設の最高位の職位である。だから、金正恩の権力や権威に変化があるわけではなく、党機関の再編成に伴う名称変更に過ぎないと考えられよう。

 また、党中央委員会のメンバーが、2010年に比べて微増した。第7回党大会で選ばれた党中央委員会委員は129名であり、議決権がない候補委員は106名であった。2010年9月28日に発表された党中央委員会委員は124名、党中央候補委員は105名であった。この微増は、全体の党員数が若干増えたことを意味するだけかもしれない。

 一部では、党中央委員会のメンバーが若返ることが期待されていたようだが、90歳代のパルチザン世代がまだメンバーに入っており、若返ったとは言い難いであろう。でも、党中央委員会のメンバーに金日成時代の人々と、金正日時代、金正恩時代の新しい人々が混在していることが、古い看板を捨てられないながらも、新しいものを模索している朝鮮労働党の姿を映しているといえないだろうか。それが計画経済の看板を下ろせない、朝鮮労働党の経済建設にも反映しているのである。

宮本悟(みやもと・さとる)
聖学院大学 政治経済学部 教授
1970年生まれ。同志社大学法学部卒。ソウル大学政治学 科修士課程修了〔政治学修士号〕。神戸大学法学研究科博士後期課程修了〔博士号(政治学)〕。日本国際問題研究所研究員、聖学院大学総合研究所准教授を経て、現在、聖学院大学政治経済学部教授。専攻は国際政治学、政軍関係論、比較政治学、朝鮮半島研究。著書に『北朝鮮ではなぜ軍事クーデターが起きないのか?:政軍関係論で読み解く軍隊統制と対外軍事支援』(潮書房光人社)など。