日朝首脳会談の可能性

 故金日成主席の生誕記念行事が行われた4月15日、粛清されたと報じられていた金元弘国家保衛相が、金正恩委員長と同じひな壇に姿を見せた。彼が、なお国家保衛省を担当し、対日政策を担当している様子がうかがえた。

 宋日昊・朝日国交正常化担当大使は17日、平壌で取材に当たっている日本人記者団を呼び集め、日本に日朝交渉再開を呼びかけた。宋大使は、①拉致再調査を約束したストックホルム合意はすでに消えた②要望があれば残留日本人問題には応じる③戦争が起きれば日本に一番被害が及ぶ――など高飛車な態度を示した。その言葉からは、話し合いを望む北朝鮮の痛々しい思いが伝わった。

 宋大使の発言には、ウソがある。戦争になれば、被害が大きいのは韓国と北朝鮮だ。日本にはほとんどない。日本がお願いすれば「交渉を再開する用意がある」という発言は、こう表現しないと北朝鮮の高官たちが納得しないからだ。

 日朝は14年、ストックホルムで「行動対行動原則」に合意した。これは日本外交の失敗だった。この言葉は、北朝鮮外交が昔から駆使する「得意用語」。拉致問題への取り組みを遅延させる一方で、残留日本人の帰国や日本兵の遺骨捜索に協力し資金を手に入れることを意味していた。

 外務省は、それに気がつかなかったようだ。安倍首相はこのトリックを知り、「拉致問題解決を最優先にしないと、交渉に応じない」と条件を変更した。北朝鮮は、外交作戦をひっくり返された。

 北朝鮮では、秘密警察である国家保衛省が日本への工作と秘密交渉を担当してきた。ところが、2002年に日朝首脳会談が失敗に終わり、日本部局は廃止。ここ数年、担当者は一人しかいなかった。最近の情報では、金委員長の指示で今年初めに日本部局が復活し、20近い人員が働いているという。金委員長は、明らかに「日朝交渉」を目指し、「日朝首脳会談」を視野に置いている。

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