拉致問題解決のキーマン

 金英哲氏は、金正恩氏が指導者に就任した当初から、偵察総局長として毎日面会し情報を伝える立場にあった。金正恩第一書記に毎日接触するので、元老や長老たちにうとまれていた。処刑された張成沢(金正恩第一書記の叔父)氏と親しく、不正腐敗に関わっているとのうわさが流れたこともあるが、数カ月に及ぶ調査の後、問題ないと判断された。

 金英哲氏は、北朝鮮の高官には珍しく不正腐敗に関わらない人物として評価されている。かつて軍の板門店司令官として、南北共同事業の開城工業団地を管轄した。このときも、韓国企業から支払われる資金を厳しく管理し、不正を許さなかったという。その高潔な姿勢を、金正恩第一書記は高く評価している。金英哲氏をプレーアップするためか、金正恩第一書記は連合拡大会議の場で「不正腐敗の撤廃」を強調した。

 金英哲氏に会った韓国政府高官も、「彼ほど頭の回転が速く、人を惹きつける魅力ある人物は、北朝鮮にはいない」と評価する。

 金英哲氏が就任した統一戦線部長は、外交関係のない国家との交渉や政策立案、情報収集を任務にする工作情報機関である。日本や米国などとの外交問題を担当する。日本ではあまり知られていないが、拉致問題についても強い発言権を持つ。拉致被害者の帰国は、同氏の進言がないと実現しない。

 日本では、国家保衛部が拉致についての全権を持つと誤解されている。現実には、偵察総局が、国家保衛部や統一戦線部以上に大きな権限を持っている。その偵察総局長を務め、統一戦線部長に就任した金英哲氏こそが、拉致問題解決のキーパーソンである。