石油の全面禁輸しか方法はない

 北朝鮮の核開発をストップさせる唯一の方法は、米軍が核施設を爆撃することだ。しかし、これは不可能である。報復措置として、北朝鮮が韓国を攻めるかもしれない。韓国政府は、そんな危険を犯すことはできない。戦争を覚悟しない限り、軍事攻撃はできない。

 もう一つは、北朝鮮軍の戦闘能力を失わせることだ。だが、こちらも決して簡単ではない。

 北朝鮮は、石油を生産しない。石油は中国やロシア、東南アジア諸国から購入している。イランからの輸入実績もあるが、多量に購入する資金はない。

 中国は、統計上は原油の輸出を中止しているが、石油禁輸措置は取っていない。カネさえ払えば、北朝鮮は中国内で自由に石油を購入し自国に輸送できる。それでも、中国からの輸入量はわずか50万トンと韓国政府は推測している。北朝鮮軍は、世界で最も石油の蓄えが少ない軍隊である。それゆえ軍事演習も激減している。

 米韓軍は、北朝鮮軍の石油を消費させるために、毎年大小の軍事演習を展開している。石油の蓄えがなくなれば、北朝鮮軍は戦闘能力と威信を失い、北朝鮮は崩壊に向かう、と計算している。いずれにしろ、北朝鮮への石油全面禁輸の制裁を国連安保理が決議すれば、朝鮮人民軍は崩壊の危機に直面し北朝鮮崩壊につながる。

 だが、中国も米国もそこまでは踏み切れない。中国は北朝鮮の崩壊を望んでいない。韓国と米国は、石油全面禁輸の制裁を実施すれば、北朝鮮が戦争に踏み切ると恐れている。だから、決定的な制裁を実行することができないのである。

金正恩の軍師登場

 2月7日のミサイル発射実験に至る過程で、日本では注目されなかったが、北朝鮮は重大な報道を行った。北朝鮮の労働新聞は4日、労働党の中央委員会と軍事委員会の連合拡大会議を初めて開いたと報じた。この会議で、ミサイル発射に関する最終決定を下した。同時に、拉致問題解決にもつながる最重要人物の昇進を明らかにした。

 この記事は、同会議に金英哲(偵察総局長)が出席したことを伝えた。しかも、金正恩第一書記の隣の隣の席に座っていたという。これは、相当に高い地位にある事実を物語る。3段跳び以上の昇進だ。金英哲氏は、日本ではあまり関心を呼んでいないが、平壌では金正恩第一書記の側近中の側近として、知られていた。平壌内部の勢力争いで、元老らにうとまれ何度となく降格されたが、再び復活してきた。

 その金英哲氏が、軍服でなく人民服で出席し発言している姿を、労働新聞は報じた。これは、意図的な報道である。労働新聞の記事や写真は、金正恩第一書記の指示通りに掲載されるから、必ず裏があるとみるべきだ。

 金英哲氏が人民服で出現したのは、彼が軍の職責でなく労働党の高い地位に昇進したことを意味している。前述のように、韓国の情報機関は、同氏が党の書記に昇進し統一戦線部長の役職に就いたと分析した。

次ページ 拉致問題解決のキーマン