ここで、日本の「再エネで発電した電力」を巡る現状をおさらいしておこう。

 企業が温暖化対策を進める時、省エネや、電気などエネルギーの燃料種を変更することが鍵になる。再エネの電力の使用も、燃料種を変えることと同じなので、温暖化対策として効果がある。近ごろは東京電力エナジーパートナーが、「CO2排出ゼロ」の水力発電の電気を売り出した。とはいえ、現状では再エネだけの電力は料金が高く、そもそも少量しか流通していない。

 紛らわしいのが、メガソーラー(大規模太陽光発電所)が生み出す電力など、FITに基づいて取引されている電力だ。この電力を企業が使っても、「CO2排出ゼロ」とはみなされない。温暖化対策としての効果もない。FITで取引される再エネの電力が本来持つはずの「CO2排出ゼロ」の価値は、電気代に上乗せして賦課金を払っている電力需要家に所有権があるというのが、今の国の制度だからだ。

 国は現行の制度を見直し、2018年春からCO2排出ゼロの価値を需要家に与えず、「証書」として取引できるようにする。これが「非化石証書」である。企業は非化石証書を買った分、消費した電力から排出されるCO2を削減できる。実際に消費した電力が再エネで発電したものでも石炭などで発電したものでも、非化石証書とセットならCO2排出ゼロとみなされる。

消費者の負担も減る?

 さらに、「温暖化対策推進法」で義務付けられている国への報告にも非化石証書を使えるようになる。同法は、一定規模以上の企業に年間の温室効果ガス排出量を報告するよう求めている。非化石証書を使えば「再エネを使った」とみなされるため、報告する温室効果ガス排出量を減らせる。

 非化石証書はこれまで、FITで取引される再エネがどの設備で発電したかを追跡・確認できないとの理由で、CDPや、温室効果ガス排出量算定ルール「GHGプロトコル」での取り扱いが決まっていなかった。

 今回の交渉を通じて、既存の再エネ活用制度である「J-クレジット制度」の排出枠や「グリーン電力証書」と、非化石証書との住み分けが明確になり、CDPとGHGプロトコルが適合を確認する調整に進んだ。

 ただ、米アップルや米グーグルなど欧米を中心に世界120社の大手企業が参加する、再エネ推進イニシアチブ「RE100」での取り扱いは未定だ。RE100は、自社が使用する電力消費の100%を再エネの電力で賄うことを目指す企業のイニシアチブである。日本からはリコーや積水ハウスが参加している。今後、RE100側の詳細な確認を経て結論が出るという。

 そもそも日本が、非化石証書を取引できるようにするのは、賦課金による国民負担の増大を減らすのが目的である。その効果がどれだけあるかは不透明だが、温暖化対策に関心の高い企業は少なくなく、証書の取引が活発になる可能性はある。再エネの普及と同時に、国民負担の引き下げを期待したい。