何十年もの間、抜かれることのなかった池の水を抜く──。そんなシンプルなコンセプトのテレビ番組『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』(テレビ東京系列)が大きな反響を呼んでいる。今年1月に第1回を放送してからシリーズで計4回放送し、今月26日に第5回の放送が予定されている。

 すっかり濁って中が見えなくなった池の水を抜いてあらわになったのは、ニッポンの生態系の現実だった。アカミミガメやウシガエルなど海外から入ってきた外来種が棲みつき、もともと日本にいた在来種の生存を脅かしている。

 外来種といえば、今年、強い毒性を持つヒアリが国内の港湾部などで大量に発見され、社会の関心が高まっている。国内に約2000種類いるとされる外来種にどう対応すればいいのか。話題のテレビ番組を手掛けたテレビ東京の伊藤隆行氏と外来種の研究を20年続けている国立環境研究所の五箇公一氏に議論してもらった。

(司会)伊藤さんが手掛けているテレビ番組『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』シリーズが話題になっています。視聴者は、中が見えない池の水を抜いたら何が出てくるんだろうと好奇心をそそられる一方で、日本の在来種を外来種から守るという役割を期待するようになっています。

伊藤隆行(いとう・たかゆき)氏
テレビ東京制作局CP制作チームプロデューサー。1972年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。バラエティ番組を担当し、『モヤモヤさまぁ~ず2』『やりすぎ都市伝説』『にちようチャップリン』など数々のヒットを生んでいる。『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』シリーズは、2017年1月から9月まで計4回放送し、大きな反響を呼んでいる。(写真:鈴木 愛子)

伊藤:番組を始めた当初は生き物に興味があったわけではないんです。昨年秋ごろ、日曜日のゴールデンタイムに放送する番組を作るように言われて、企画を考えていました。そのとき、東京都内で事件があって、警察の方が現場の近くにある公園の池を棒で突っついて捜索している様子をたまたまテレビで見たんです。不謹慎かもしれませんが、「水抜いちゃえばいいのに」って思って。そうしたら、以前、「かいぼり」をした池からコイがいっぱい出てきたテレビの映像を思い出して、そんなところから着想を得ました。

 池の水を抜くだけで、2時間の特番ができたらいいなと。社内では猛反対を受けましたが、もっともらしい理由をつけて説明したら、「やってみれば」ということになりました。番組のタイトルも、「緊急SOS!危険生物から日本を守れ!」という文字を大きくして、「池の水ぜんぶ抜く」という文字は小さくしたりして。

 ですから、番組MCの田村淳さん(ロンドンブーツ1号2号)と初めてロケに行って、東京・品川の池からスッポンが出てきたときも、「スッポンってこんな街中にいるんだ」と思ったぐらい、生き物の知識はありませんでした。「スッポンは在来種で、それがいるということは生態系がぎりぎり守られている」ということも、そのときに専門家から聞いて初めて知りました。

 アカミミガメなどの外来種が在来種を食べている。ロケをして初めて、池の生態系に触れたんです。コイとか出てくるかなと思っていましたが、こんなにうじゃうじゃ出てきてびっくりしました。

五箇:日本の池にいるカメは、アカミミガメが8割、ニホンイシガメとクサガメがそれぞれ1割でしょうか。外来種のクサガメはイシガメと交雑しやすいと言われています。交雑すると固有の遺伝子そのものがなくなるので、取り返しがつかなかくなります。元に戻せない不可逆的な現象が起きてしまうので深刻な問題です。そうした生態系に影響を及ぼす外来種は排除せざるを得ません。

伊藤:それは国がやるべき仕事でしょうか。

東京都内にある池の水を抜いたら巨大なスッポンが出現(左)。外来種のアリゲーターガー(右上)や在来種のヌマガイ(右下)など、想像もしなかったような珍しい生き物が池の底に潜んでいた ©テレビ東京