──見つかった有害物質による健康への影響は。

中西:豊洲市場は地下水を使って魚を洗ったり、調理したりするわけではないので有害物質が体内に入る可能性は低い。土壌汚染対策として、摂取経路をきれいな土やコンクリートなどで遮断する方法がある。地下に盛り土がされていなかったことが問題になっているが、建屋の床のコンクリートで遮断されている。

 東京都の公表資料によれば、表面の土壌を掘削し、洗浄や加熱処理した上で戻したり、地下水に汚染があれば浄化して排水したりするなど十分な対策を取っているといえる。有害物質があったとしても拡散していくような状況は考えにくい。

 地下水の水質管理のための「環境基準」は、毎日2lの水を70年間飲み続けた場合に健康被害が出ることを防ぐための「飲料水基準」と同じに設定している。飲むわけでもない水に含まれる物質が、その値を一時的に超えたからといって慌てる必要はない。もし常に基準を超えるような状態になれば、そのときに原因を突き止めて対策を打てばいい。

──基準値超えが続いたらどうすればいいのか。

中西:対策としては、汚染されている土壌を取り除くか、土壌はそのままにして地下水を管理するかの2つがある。地下水の管理というのは、人が飲まないようにしたり、水をきれいにしたりすることだ。ただ、日本では費用のかかる掘削除去の方を選ぶケースが多い。

 これからの環境対策は費用についてしっかり考えないといけない。過度な対策は余計なエネルギーを使うことが往々にしてあり、新たな環境問題を引き起こしかねない。リスクの大きさと対策の効果を調べてコストパフォーマンスを高めることが、本当の意味での環境対策ではないか。

ゼロリスクを求めるのは不可能

 続いて、リスク心理学に詳しい京都大学大学院教授の藤井聡氏に豊洲市場を巡る騒動について聞いた。

──豊洲市場の移転問題が、連日、テレビや新聞で報道されている。

内閣官房参与 京都大学大学院教授
藤井 聡氏

藤井:今の状況をみていると、客観的な技術の議論がなく、不安が一人歩きしていると感じる。

 技術的に考えて、盛り土をせずに地下ピットを設けたことが安全性で問題になるとは考えにくい。一般的に地下水は、土壌を通じて地上に上がってくるリスクがある。地下ピットは地下水を遮蔽する役割を果たし、土壌から水を抜く排水システムが正常に動作すれば、地下水が地上へ出るリスクはさらに小さくなる。