東京都は11月1日、豊洲市場の施設の下に盛り土をせずに地下空間を設けたことについて、「いつ、誰が、決めたのか」という意思決定のプロセスを検証した報告書を公表した。決定に関わったとされる責任者を特定し、今後、対処を検討するという。11月7日に予定されていた豊洲市場への移転が延期されたことによって、導入済みの設備のリース料の支払いなど市場業者への補償も急務になっている。
「立ち止まって考えるべき」──。小池百合子知事が選挙期間中にこう発言して以来、豊洲市場の移転問題が混沌としている。8月に移転延期を決定した後、豊洲市場の主要施設の下に、都の「専門家会議」が提案した土壌汚染対策の「盛り土」がされずに地下空間が設けられていたことが発覚した。今回、公表した報告書は、この経緯に関して詳しく調べたものだ。さらに、土壌汚染対策法の指針に基づいて実施されている地下水のモニタリング調査で、環境基準を超えるベンゼンとヒ素が検出された。
豊洲市場の移転問題が膨らむ中、市場関係者や消費者が最も気にかけているのは、「食の安全」だろう。「安全性に問題はないのか」。日経エコロジーは、環境リスクに詳しい専門家らに取材した。以下、2人のインタビューを紹介する。

「摂取経路」と「量」の議論を
まず1人目は、化学物質などの環境リスク評価で知られる産業技術総合研究所名誉フェローの中西準子氏である。

中西 準子氏
──豊洲市場の安全性をどう評価している。
中西:土壌汚染は急激な健康リスクがあるというものではない。一番大事なのは、土壌汚染が存在するということではなく、土壌に含まれている有害物質が人の体に入る経路があるのかどうか、入ったとしてどれくらいの量なのかということ。それなのに、それらについて議論しないまま、地下水からベンゼンやヒ素が検出されたと大騒ぎしていること自体が大きな問題だ。
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