米アップルが、太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用率を高めている。同社が毎年、発行する環境レポートによれば、2010年にグローバルで消費したエネルギーの35%が再エネだった。これを2015年は93%まで高め、将来は100%にまで引き上げる考えだ。9月には、事業サプライチェーンにおける再エネ利用率を100%に高めるという野心的な目標を志す企業連合、「RE100」への加盟も発表した。
同社は地球温暖化に対処するため、再エネを活用して「カーボンフットプリント」を削減しようとしている。カーボンフットプリント(炭素の足跡)とは、製品のライフサイクルで排出される温室効果ガスのことだ。具体的には、製品に使う金属やプラスチックなどの素材の原料の採取や、部品・製品の製造、輸送、そして私たちが製品を使ってリサイクル・廃棄するまでの間に多くのエネルギーが使われる。こうした製品の生涯で排出されるCO2などの量の合計をカーボンフットプリントという。
とはいえ、アップルは事業所の屋根や敷地内に太陽光パネルなどの再エネ発電設備を大々的に導入したわけではない。「アップルをはじめ海外企業は、再エネ電力の導入策として自社施設への発電設備導入だけでなく、電力購入契約による外部からの調達や証書の利用にも積極的である」と、みずほ情報総研の谷優也コンサルタントは話す。
外部からの調達とは、電力小売り会社との相対の電力売買契約や、電力小売り市場からの購入のこと。「証書」は、CO2を排出しないという再エネの環境価値を売買する仕組みだ。1万kWhの火力発電の電力を消費した企業が1万kWh分の証書を買えば、その分のCO2排出はゼロとみなされる。日本でも「グリーン電力証書」を買える。
アップルの場合、事業所内に設置した再エネ発電設備の電力を使った割合は0.6%、事業所外の適地に置いた自社所有の再エネ発電設備の電力の割合は20.3%だ。残りは契約に基づく外部からの調達(57.2%、多くは相対の売買契約とみられる)や、証書(21.9%)で賄っている。
ESG投資家が低炭素電力の購入に注目
一方、企業の環境対策を調査・採点しESG投資家に情報提供する国際NGOの「CDP」は、2016年から企業に送る調査票を更新した。外部から購入した電力・熱の利用によるCO2排出量「スコープ2」を算定する際に、CO2排出量の少ない電力を外部から買った実績があればそれを明確にするように求めた。CDPを支援するESG投資家の時価総額は合計で100兆ドルに及ぶ。CO2を排出しない再エネの比率を高め、スコープ2排出量の削減に乗り出したアップルは、10月25日にCDPが発表する最新の結果報告において投資家らの目を引きそうだ。
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