労働生産性が低い日本

樋口:日本企業は他国に比べて生産性が低いというデータがあります。その理由の1つがIT活用の遅れです。IT設備に投資しているのですが、それを使いこなす人への投資ができていません。日々の仕事に追われて仕事が選別されておらず、無駄を排除できていません。

山本:働き方改革の参加者に業務に関するアンケートをとると、当然「労働時間が長い」と答える人が多いです。ただ、「なぜ長いのか」と一歩踏み込んで考えている人は少ないように思います。情報共有も遅れています。誰がどのような目標を掲げ、どのような仕事をしているかという情報が共有されていません。

樋口:目の前の仕事に追われ、社員が疲れきっている典型的なケースです。働き方を改革しようという意識を失っています。従業員の業務内容や目標を「見える化」すると、今しなければいけない仕事と、自主的にしている仕事がはっきりします。社員の自主性やモチベーションの向上につながります。

進捗や目標を事細かに共有するのは、抵抗がある人もいるのではないでしょうか。

山本:確かにそういう声を上げた企業は多かったです。ただ、改革に取り組んだ企業を見ると、社員が一人ひとりの働き方を理解し、尊重できるようになったという声も多いです。いきなり全社で取り組むのではなく、まずはモデル部署を選び、小さく始めてみるのがコツです。

樋口:今は「22時以降は強制的に消灯」など、全社一律の規制を設ける企業が多いです。背景には、平等や一律性を重んじる日本人の気質があるのかもしれません。違いや多様性を認めたくないという人間の本心があるように思います。

山本裕介(やまもと・ゆうすけ)氏
グーグル ブランド マーケティング マネージャーWomen Willプロジェクト兼務。東京大学社会学専修課程修了。大手広告代理店などを経て2011年にグーグルに入社。IT(情報技術)で女性活躍を推進する「Women Will」や地域活性化を支援する「Innovation Japan」などのブランディングを担当。内閣府の男女共同参画会議「男性の暮らし方・意識の変革に関する専門調査会」委員

 全社一律の強制的な対策だけでは問題は解決されません。仕事量が減っていないにもかかわらず業務時間だけを短縮するのは、「小手先」の対策にすぎません。無駄な仕事をなくし、個々人が工夫して効率的に仕事を進めていくような、自主性を尊重する企業体質にしていかなければいけません。

山本:働く時間や場所に柔軟性を持たせ、一人ひとりが働きやすい環境で働けるようにすることで社員のモチベーションとパフォーマンスを上げ、それを生産性向上につなげていくこともできると思います。

ある機関の調査では、正社員の約6割が働き方改革を望んでいるのに対し、経営側は4割程度というデータがあります。

山本:残業を禁止した結果、早朝や深夜に会社以外で仕事をしているという声をよく聞きます。残業代が減ることを嫌がる社員もいるでしょう。今の働き方改革は、企業目線の導入になっているように思います。