少子高齢化や労働力減少が進む中、「働き方改革」の必要性が叫ばれている。ただ、女性活用、ダイバーシティ、在宅勤務など、取り組む範囲は広く、手間もコストもかかる。

 働き方改革は、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する海外投資家、消費者、取引先なども注目している。新しいモノや価値を生み出し、持続可能な経営を実現する働き方とはどういうものか。

 日経エコロジーは、慶應義塾大学商学部の樋口美雄教授と、グーグルで働き方改革プロジェクト「WomenWill」を担当する山本裕介氏に、働き方改革の課題や在り方などを議論してもらった。

(司会)多くの企業が働き方改革に取り組んでいます。現状をどう評価していますか。

樋口:バブル崩壊後の「失われた20年」以降、日本企業はコスト削減によって競争力を維持しようとしてきました。その1つが人件費の削減です。正社員を減らした一方で、仕事量は変わっていません。これは総合職でも顕著になっています。

樋口美雄(ひぐち・よしお)氏
慶應義塾大学商学部教授。1975年慶應義塾大学商学部卒業。91年同大学商学部教授。米コロンビア大学客員研究員、スタンフォード大学客員研究員、オハイオ州立大学客員教授などを経て現職。専門は、計量経済学、労働経済学で、ダイバーシティやワークライフバランスの効果などを研究する。政府の「働き方改革実現会議」議員(写真:中島 正之、以下同)

 かつては企業が成長した分だけ給与も上がりました。しかし現在は、こうしたインセンティブも小さくなっています。確かに働き方改革の声は広まっています。ただ現状は、目の前の仕事に追われ、実効性のある改革ができていない企業が多いと思います。

山本:グーグルは2014年からIT(情報技術)を活用した働き方改革「WomenWill」というプロジェクトを推進しています。複数の企業と共同で、在宅勤務、会議の効率化、退社時間計画などを実施し、課題や成果などを共有する取り組みです。

 働き方改革に対する企業側の意識は格段に高まっていると思います。当初は、「IT活用で働き方改革をしませんか」という話をもちかけても、人事部から「ITは範囲外」、情報システム部から「働き方は範囲外」と言われ、なかなか進みませんでした。部署の壁がそのまま改革の壁になっていたわけです。

 今は、スケジュール管理、ビデオ会議、ファイル共有などのITツールを業務で活用するケースが増えてきました。働き方改革の専門部署を設ける企業も多くなっています。