情報を開示しないことがリスクに

 味の素も投資家やアナリストと対話する場を通じて、積極的に意見を吸い上げている。毎年春に開催するESG説明会をはじめ、アナリスト向けの決算説明会、経営陣と投資家との直接対話の場など、1年を通じて頻繁に開催している。味の素グローバルコミュニケーション部の川崎嘉治・企画グループ長は、「ESG説明会で、ポリシーの情報が少ないことに気付かされた」と話す。

 非財務情報を充実させた「サステナビリティデータブック」は、ESG指数の作成などを手掛ける評価機関を主な対象に据え、情報の網羅性を重視する。評価機関のニーズに対応し、開示する項目は増え続けている。例えば2016年版には、従業員の定着率や離職率、メンタルヘルス休職者数などを追加して載せている。グローバルコミュニケーション部の長谷川泰伸CSRグループ長は、「人事データは情報の質と量が全く変わってきている」と話す。

 サステナビリティ日本フォーラム代表理事の後藤敏彦氏は、「機関投資家に株式を長期保有してもらおうと思えば、情報を徹底的に開示する必要がある。これまでは過去の情報が中心だったが、ESG投資の対象になると将来の情報が重要になる」と話す。

 エフティーエスイー(FTSE)・ジャパン・リミテッドアジア・パシフィックヘッドESGの岸上有沙氏は、「日本企業のESG評価はほとんどの項目でグローバルの平均値を下回っている。ただし、この1年半で見ると日本企業の改善率が1番高い」と話す。日本企業は「伸びしろ」が大きいといえ、情報開示に対する要求の高まりは企業の評価を高める絶好の機会といえる。

 反対に情報を開示していなければ、投資家や評価機関からは、「何もしていない」「リスクを認識していない」と判断されてしまうだろう。足元の業績が良い企業も、情報開示の仕方によっては評価を下げる恐れがある。それに気付いた企業は、報告書やウェブサイトの見直しに動いている。「情報を開示しないことがリスク」と考え、労災件数や離職率、欠勤日数といったネガティブなイメージを持たれかねない情報も、企業としての考え方や対応方針を含めて開示することが重要だ。