オリジナリティーが光る丸井グループの報告書だが、投資家の声にしっかり耳を傾けて作られている。2015年の発行以来、必ず報告書の説明会を開いている。投資家向けのESG説明会を開催する企業が増えているが、丸井グループはその走りだ。さらに、環境省の環境情報開示基盤整備事業に参加し、約150社の機関投資家や企業にアンケートを実施。そこで報告書に対する声を吸い上げ、改善に生かしている。

 丸井グループIR部の寒竹明日美IR担当課長は、「分からないことはすべて聞く。投資家からの要求は尽きないが、2017年版では10年後を見据えた経営の在り方などを表現する予定だ」と言う。

 統合報告書やCSR報告書に掲載し切れないESGの詳細データは、ウェブサイトでしっかり開示する。「報告書は、今の私たち、これからの私たちを見てもらうためのもの。数字からは分からない行間の思いを発信するツールとして活用していきたい」(丸井グループESG推進部ESG推進担当の塩田裕子課長)。

日本企業はポリシー情報が不足

 味の素は今年7月、「統合報告書2017」を公表した。2年目となる今回の目玉は、非財務(社会価値)の目標と財務(経済価値)の目標を一体化させた「統合目標」である。

 昨年は経営トップのメッセージが明確である点や、「ASV」と呼ぶ味の素版CSV(共有価値の創造)の取り組みが具体的である点が評価された一方、物足りなさを指摘されてもいた。社会価値向上の取り組みがどのような経済価値を生むかを示し切れなかったのだ。そこで、2017~19年度の新中期経営計画で「統合目標」を定め、報告書にも掲載した。

 例えば、バランスの良い栄養摂取を促進することによって、「健康なこころとからだ」の実現に貢献する取り組みがある。肉・野菜の摂取量の目標とともに、うまみ調味料や風味調味料の販売量の目標を示し、売上高への貢献を明確に打ち出している。なぜ取り組むのかの「根拠」となるポリシーも策定した。投資家の指摘を受けて、「栄養」「食の安全・安心」「製品表示」の3つのポリシーを新たに追加した。

 CSR報告書の制作支援などを手掛けるクレアン統合報告支援グループの冨田洋史マネジャーは、「日本企業は、コミットメント、責任者、マネジメント体制、ポリシーといった情報が足りないケースが多い」と指摘する。

味の素が毎年春に開催している投資家向けのESG説明会