投資家が認める「優れた統合報告書」

 青井社長は、統合報告書「共創経営レポート」と、非財務情報を充実させた「共創サステナビリティレポート」と合わせて、報告書の検討会議にはすべて参加する。その数、年間40回に及ぶ。「こういうことだったら、こうやって伝えた方がいいんじゃないかな」「僕はこう思うけれど、投資家や従業員たちはなんと言っているの」などと発言し、活発な議論を展開するという。報告書の制作に社長がここまでどっぷり関わっている企業は珍しいだろう。

 統合報告書の前半にある「社長メッセージ」は、青井社長自ら筆を執り、同社の過去、現在、未来についてありのままを8ページに渡って語っている。

 こうした体制で作り上げた報告書は、対談や写真を生かした「読み物」風になっており、他社とは一線を画す。国際統合報告評議会(IIRC)のフレームワークに従って報告書を制作する企業が少なくない中、丸井グループはそうした形式に縛られず、「どうすれば一番伝わりやすいか」を徹底的に議論して作る。

 同社の統合報告書は、GPIFの運用委託機関が選ぶ「優れた統合報告書」に、味の素やオムロン、大和ハウス工業などと並んで選ばれており、投資家からの評価も高い。統合報告書の制作支援などを手掛けるエッジ・インターナショナル(東京都港区)の梶原伸洋CEOは、「統合報告書で重要なのは、オリジナリティーがあること。外部から高く評価されている統合報告書は、伝えたいメッセージが明確に感じられ、価値創造の仕組みや持続的成長へのシナリオを見せようという熱意が伝わってくる。トップの肉声が随所に感じられる点も共通点だ」と話す。

 丸井グループの統合報告書を投資家が高く評価するのは経営トップの強い関与もそうだが、企業の価値をどう高めようとしているかが明確である点も大きいだろう。同社は、顧客の「しあわせ」を様々なステークホルダー(利害関係者)と共に創る「共創価値」経営を掲げる。企業の価値を、すべてのステークホルダーの「利益」が重なり合う部分と定義し、それを広げていけば企業価値の向上につながると説明している。円を重ねて描いただけのシンプルな図は、丸井グループの考え方を端的に表している。

 2016年版では、共創の取り組みが企業価値の向上にどう結び付いているかを数字で強調した。例えば、顧客と共に開発したプライベートブランド(PB)商品の婦人靴がある。履き心地やデザインを追求した「ラクチンきれいパンプス」などの売上高が、2010年の発売から6年間で70倍に伸びている実績を伝えている。