7月に、三菱重工フォークリフト&エンジン・ターボホールディングス(M-FET)」が本格始動した。同社は、フォークリフト、エンジン、ターボチャージャー(過給器)の3つの事業を傘下に置く統括会社である。

 M-FETは今年3月に発足し、4月にはその下で新たなフォークリフト事業が始動した。7月には、相模原工場にあるエンジンとターボチャージャー(過給器)事業を三菱重工本体から分離し、M-FET傘下へ移管。本格的な営業活動に入った。

 フォークリフト、エンジン、ターボチャージャーという。一見するとあまり関係性がないように見える3組織の融合だが、これにはどのような狙いがあるのか。キーワードは「エネルギーマネジメント」だ。

相模原工場にあるガスエンジン発電機の製造現場

分散電源や遠隔監視のノウハウ結集

 エンジン事業は、ガスエンジン発電機などの分散電源の運用や遠隔監視のノウハウを持つ。これを支えるのが、燃費改善や環境性能の技術を有するターボチャージャー事業だ。同社は、こうしたエネルギー設備や運用ノウハウを組み合わせたエネルギーマネジメント・サービスを、今後の事業拡大の柱とする。

 今年4月の電力小売りの完全自由化で、ガスエンジンや再生可能エネルギーなどの分散電源を活用した電源供給のニーズが高まっている。来年4月に予定されているガス小売りの全面自由化で、こうした動きは加速しそうだ。同社は新電力などに向けて、分散電源を活用したエネルギーマネジメントシステムを提供する。

 さらに、エネルギーマネジメント事業の展開を、フォークリフトの世界シェア拡大につなげる。狙うのは、発電機とフォークリフトなどを組み合わせたエネルギーマネジメントサービスの提供だ。IoT(モノのインターネット)を活用して発電機やフォークリフトの稼働状況などのデータを収集・分析し、省エネと生産性向上につなげる。

相模原工場にある発電設備の遠隔監視センター

フォークリフトの蓄電池も分散電源に

 物流拠点は、荷物の仕分けをする夜間から朝方にかけて多くの電力を消費する。拠点全体の電力消費量や電動フォークリフトに搭載している蓄電池の残量を常時監視。蓄電池の余剰電力を活用して、消費電力量の多い時間帯のピーク電力を下げたり、消費量が少ない時は売電したりする。さらに、非常時のバックアップ電源としての活用も見込める。

 現在、インターネット通販会社などが、即日・翌日配送のサービスを強化しており、物流拠点の効率化を進めている。こうした需要を取り込み、将来的には、無人搬送・倉庫システムなどの新分野を開拓する。原子力発電所向けに、放射性廃棄物の無人搬送システムの提供なども視野に入れている。

 グループ会社で世界シェア6位だったニチユ三菱フォークリフトは、今年3月にユニキャリアホールディングスを買収してシェア3位になった。フォークリフトを運搬機としてだけでなく、蓄電池としても活用し、エネマネサービスと併せて販売することで他社と差別化し、首位の豊田自動織機と2位の独キオンを追撃する。

三菱重工のフォークリフトのラインナップ

 M-FETは、自律的で迅速な経営で三菱重工グループの中核を担う「独自経営合弁会社」という位置付けだ。M-FETの現在の売上高は約7300億円で、2020年にはこれを1兆円にまで伸ばしたい考えである。顧客のニーズに合わせたサービスを機動的に提供できるか。エネルギーマネジメント事業の成否が成功のカギを握る。