一方、EU域内の温暖化対策には影響がありそうだ。

 EUは現在、英国を含むEU全体で2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で40%削減する目標を掲げている。NGO(非政府組織)などはEUの目標を「温暖化対策のリーダーらしい意欲的な目標」と評価してきた経緯がある。

 高村教授は「英国はEUよりもさらに野心的な目標を設定している。目標達成に必要な排出削減を、英国を除く加盟国で分担して達成することになるため、他国の負担が大きくなる」と指摘する。英国は2025年までに同50%削減、2050年に同80%削減するという、他の国と比べても削減幅の大きい目標を掲げている。6月30日には2030年までに57%削減する目標を、新たに追加した。

 ただし、高村教授はこう付け加える。「EU非加盟国のノルウェーやアイスランドは、EUの2030年目標に参加している。英国も同様の対処を採る可能性もある」。ノルウェー・アイスランド方式を取るなら、EU目標への影響は軽微となりそうだ。

 しかし、英国離脱が温室効果ガス削減の2030年目標にもおよび、EUの現在の目標を残る国で分担できないとなれば目標の見直しもあり得る。パリ協定は締結国の目標引き下げを認めていないが、締結前ならば可能性はある。そうなればこれまで意欲的な目標を掲げることで国際社会を先導してきたEUが、その発言力を落とすのに加え、NGOや先進国の率先的な排出削減を求める途上国のやり玉に挙がることにもなろう。

再エネ、原発新設は後退か

 英国内でも対策が後退する可能性が否めない。

 英国の政策に詳しい東京大学の有馬純教授は、「保守党の離脱派議員や英国独立党は地球温暖化の否定論者がいたりするなど、温暖化対策に後ろ向きとみられる」と指摘する。ただ、「同国の温暖化対策を規定する気候変動法は、保守党、労働党、自民党の幅広い支持によって成立した。EU離脱になったとしても、同法が廃止になる事態は想定しがたい」(有馬教授)。離脱した後も、英国が目標を維持する可能性はありそうだ。

 しかし、その目標を達成できるかどうかについては、不透明感が出てくる。有馬教授は「EU指令の下、英国が取り組む再エネ導入拡大策に冷や水もあり得る」とみる。

 「再エネ導入コストが膨らみ過ぎ、これまでの保守党政権下でも普及推進策の中断が始まっていた。英国がEUの温暖化対策から降りる場合は、再エネ導入目標も後退しかねない」(有馬教授)。

 温暖化対策で重要な役割を担う原発の新設計画への影響も読めない。エネルギー・温暖化政策に詳しい電力中央研究所の上野貴弘主任研究員は、「英国による原子力発電所の新設補助制度にかけられていたEUの制限が外れることで新設を進めやすくなる可能性がある。一方で英国は、海外の投資を呼び込んで新設しようとしており、離脱で投資環境としての英国の魅力が退行すれば、計画の減速もあり得る」と推測する。

 英国がEUとの間でどのような条件で離脱に及ぶかが、英国と、そしてEUの温暖化対策を左右しそうだ。条件によっては、EUや英国が自他共に喧伝してきた「温暖化対策の先導者」の名を返上することにもなるだろう。