従来の肥料で栽培した芝(右)に比べて根の育ちが速い(左)

 新開発の肥料は2004年に研究を開始し、水稲栽培では収量の増加や品質の向上に効果があることが分かっていた。ゴルフ場の芝管理に行き着いたのは、研究を共にしていた肥料メーカーの提案を受けたのがきっかけだ。昨年夏にあるゴルフ場で使ってみた結果、根のしっかりした良質の芝が育ち、「すぐに欲しい」と言われて話が進んでいったという。

 アサヒは肥料メーカーと農業資材の販売代理店を通じてゴルフ場に肥料を供給している。肥料の販売で関係を築いたゴルフ場が、ビールの取引をアサヒの競合から乗り換えてくれるといった副次的な効果もあるという。アサヒが飲めるゴルフ場に行ったら、芝の状態を注意して見てはいかがだろうか。他のゴルフ場でプレーするよりパッティングが決まりやすいかもしれない。

農薬減らしCO2を10%削減

 ビール酵母細胞壁から作った肥料は、ゴルフのプレーに好影響をもたらすだけではない。ゴルフ場にとっても芝管理のコストを削減できるメリットがある。この肥料で育てた芝は病気になりにくく、農薬の使用量が少なくて済むからだ。前述の佐藤さんは、「農薬の使用量は大幅に減った。従来と比べて3分の1から4分の1ぐらいになっているのではないか」と驚きを隠さない。

 さらに、環境負荷の削減にも貢献する。根が短期間で成長するのに対して地表に生える茎の部分は伸びにくいため、芝刈りの頻度が少なくて済む。農薬使用量の削減などを考慮すると、ライフサイクル全体のCO2排出量は、従来の肥料で栽培する場合と比べて約10%少なくなるという。仮にアサヒの肥料を国内のすべてのゴルフ場に適用した場合、最大で年間4万6000トンのCO2を削減できると試算する。

 アサヒグループは、昨年2月に発表した中期経営方針でESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組み強化を重点課題に掲げている。ビール醸造の副産物を有効活用することで、環境保全型の農業を推進し、温室効果ガスの削減につなげる。アサヒバイオサイクルは、今後、ゴルフ場の芝管理の海外展開を視野に入れながら、農産物の栽培にも事業を広げる方針だ。